「ついていきたい」と言われるリーダーは特別なカリスマ性があるわけではありません。彼らに共通するのは、チームの心を動かす「率先垂範」と、メンバーが主体的に動く状態を作る「自分ごと化の設計」を両立させていることです。

私はどちらかといえば古いタイプの人間です。優れたチームは背中で引っ張れ、姿を見せれば伝わる、行動で証明しろ──そういう環境で育ってきました。実際、率先垂範によってチームを一気にドライブさせ、結果を取りにいく場面を何度も経験してきました。

しかし、マネージャーとして人を育てる立場になると、ひとつの壁に当たります。それは、「同じやり方を教えても、メンバーは動かない」という事実です。特に今の世代は「言われたからやる」では動かず、「納得したら動く」。価値観やモチベーションの構造が変わっているのです。

率先垂範は重要だが、それだけでは“育たない”

率先垂範は強力なリーダーシップの型です。信頼を獲得し、チームのスタートダッシュを作る上で非常に有効です。ただし、それは短期的にチームを前に進める方法としての話。中長期で「主体性のあるチーム」を作るには不十分です。

現場ではこんな問題が起きます。

  • リーダーが動いている間は良いが、いなくなった瞬間に止まる
  • 「言われたことはやる」が、「言われないことはやらない」状態になる
  • リーダーが頑張るほど、逆にメンバーが“受け身”になってしまう

この状態が続くと、リーダーの稼働はどんどん増え、チームの自走力は逆に下がります。結果として、「熱量のあるリーダーがワンオペで疲弊する」という構図が生まれます。これは精神論や「気持ちの問題」ではありません。設計の問題です。

“自分ごと化”は才能ではなく設計で作る

チームが主体的に動くために必要なのは、「やる気」ではなく状況設計です。私はメンバーを育成するとき、必ず次の3つから始めます。

  1. 役割の位置づけを明確にする(Why接続)
    「なぜこの仕事をあなたがやるべきなのか?」をチームや事業の目的と結びつけて伝えます。人は役割の意味を理解したときに初めて動きます。
  2. 判断基準を渡す(判断設計)
    任せたのに戻ってくる=判断軸がない状態。逆に、判断基準さえ明確なら、人は迷わず動けます。
  3. 成功パターンを共有する(再現性の解像度)
    「やってみろ」は放置と同義です。最初は型を渡すことが必要です。これはPdMでいうMVPと同じ考え方です(関連記事:課題解決型PdM)。

この3つを渡すだけでも、メンバーの行動は見違えるほど変わります。「指示待ち」から「意思を持って提案する側」へ変化していきます。

モチベーションは“共有”ではなく“接続”で生まれる

「ビジョンを語ればメンバーは動く」と考えるのは危険です。伝えるだけでは足りません。必要なのは仕事と本人の納得の接続です。

私は1on1でよくこう聞きます。

  • 「この仕事の何が面白いと思える?」
  • 「逆に、どんな状態になったら嫌になる?」
  • 「成果が出たとき、誰に一番認められたい?」

これらの質問は、本人の価値基準を一緒に見つけるための質問です。内発的動機は、本人の言葉で言語化された瞬間に生まれます。

行動を生ませるには“設計”と“関係性”の両輪が必要

メンバーを動かすために必要なものはこの2つです。

  • 仕組みの設計(構造):役割・判断・責任の見える化
  • 信頼の貯金(関係性):肯定・挑戦の両方を渡す対話

この2つが揃った先に、初めて率先垂範が“効く”状態になります。なぜなら、人は納得した相手の背中にしかついていかないからです。

結論:率先垂範は「最後の一手」だ

私自身、率先垂範を否定しません。むしろ、ここぞという場面でチームを引っ張るリーダーは必要です。ただ、大切なのは順番です。

誤った順番:率先垂範 → チームが依存

正しい順番:役割設計 → 判断設計 → 自分ごと化 → 率先垂範

背中は見せるものではなく、メンバーが“納得したとき”に初めて届くものです。

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