「この機能、なんで必要なの?」
「それ、本当にユーザー使うの?」
「で、売上いくら上がるの?」
PdM(プロダクトマネージャー)なら誰しも、自信満々に出した企画書が、会議室でボコボコにされた経験があるはずです。
正直に言いますが、私も駆け出しの頃はそうでした。
徹夜してPowerPointを作り込み、画面遷移図まで完璧に用意してプレゼンしたのに、「やり直し」の一言で終わる。
なぜか?
答えはシンプルです。
「解像度」が低いまま、「思いつき(Solution)」を語っていたからです。
20年のキャリアの中で、私は数え切れないほどの失敗を重ね、一つの結論に達しました。
企画書に「センス」や「美しいスライド」は不要です。
必要なのは、誰が突っ込んでも崩れない「論理の骨組み(構造)」だけ。
今回は、私が現在実務で使い倒している、強制的に企画を通すための「9ブロック・テンプレート」を、失敗談を交えて解説します。
私の失敗談:なぜ「機能」から入ると死ぬのか
かつての私がよく書いていた、典型的な「ダメな企画書」の例を出します。
課題: 最近、競合A社がAIチャットボットを導入した。
施策: 我が社もトップページにAIチャットボットを導入したい。
効果: 流行りのAIを入れることで、先進的なイメージを与え、CVRが上がるはず。
これを見て、今の私なら3秒でこう返します。
「で、ユーザーはいつ困ってるの?」
この企画書の敗因は、主語が「競合」や「自分(作りたい)」になっていることです。
ユーザー不在の企画は、どんなに高機能でも、現場では「無駄な実装」として嫌われ、経営層からは「投資対効果が見えない」と弾かれます。
思考を矯正する「9ブロック」の魔法
では、どうすればいいのか。
私は現在、Notionで作った「9つの空欄」を埋めるまで、一切の施策(仕様)を考えないというルールを自分に課しています。
このテンプレートを使うと、思考の順番が強制的にこう変わります。
- × 「何を作るか(What)」から考える
- ○ 「誰のどんな痛みを取り除くか(Why)」から考える
実際に私が使っているテンプレートの項目に沿って、具体的な思考プロセスを公開します。
(※例として、不動産検索アプリの改善企画を想定します)
1. 顧客シーン(状況)
多くのPdMがここで「20代男性」のような属性を書いてしまいますが、それは間違いです。
必要なのは「文脈(コンテキスト)」です。
ユーザーがその課題に直面するのは、どんな瞬間ですか?
記入例:
引っ越し期限が来月に迫っており、通勤電車の中で焦りながら物件を探している瞬間。
2. ユーザー課題(Pain)
その状況で、ユーザーは何に「イラッと」していますか?
「使いにくい」といった曖昧な言葉は禁止です。
記入例:
条件を入れるたびに「該当物件ゼロ」と表示され、「結局どの条件を緩めればいいのかわからない」と絶望している。
3. 課題の仮説(Why)
ここがプロの見せ所です。なぜそのPainが起きているのか、構造的な原因を突き止めます。
記入例:
検索システムが「AND検索(すべて一致)」しかできず、ユーザーに「完璧な条件入力」を求めているからではないか?
ユーザーは「相場」を知らないため、無茶な条件を入れてしまっている。
4. エビデンス(事実)
仮説だけならただの妄想です。数字や定性データで裏付けを取ります。
記入例:
・定量:検索結果「0件」の発生率が42%
・定性:ユーザーインタビューで「何を入力すれば出るのかわからない」という声が多数
5. 提供価値(Value)
その課題が解決されたら、ユーザーはどんな「良い状態」になりますか?
記入例:
相場感がわからなくても、妥協点(駅徒歩を5分→10分にする等)を提案され、スムーズに候補物件に出会える状態。
6. 事業価値(Business)
ここまできて初めて、ビジネスの話をします。
ユーザーが幸せになると、会社はどう儲かりますか?
記入例:
検索離脱率の低下により、内見予約数(CV)が10%向上する。
7. KPI(行動変化)
ここも重要です。「売上」は結果指標(遅行指標)なので、施策のKPIにしてはいけません。
見るべきは「ユーザーの行動が変わったか」です。
記入例:
検索結果0件時の「再検索率」と「条件変更機能の利用率」。
8. 施策(How)
1〜7が埋まって初めて、「じゃあ何を作る?」が出てきます。
ここまでロジックが通っていれば、大掛かりなAIなんて不要かもしれません。
記入例:
0件ヒット時に「この条件を外せば3件あります」と表示するレコメンド機能(MVP)。
9. 工数・範囲
最後に、現実的な実装ラインを引きます。
「型」は、あなたの時間を守るためにある
いかがでしたか?
最初の「AIチャットボット入れたいです」という企画書と比べて、説得力の差は歴然だと思います。
重要なのは、「この9つの枠を埋める作業をしただけ」だということです。
私たちは限られた時間の中で成果を出さなければなりません。
何度も企画書を書き直したり、会議で紛糾して持ち帰ったりする時間は、私にはありません。
だからこそ、「一発で通るフォーマット」が必要だったのです。
この型を使ってから、私の企画通過率はほぼ100%になり、エンジニアからも「作る理由が明確で助かる」と言われるようになりました。
実務テンプレートを配布します
今回紹介した思考プロセスを、今日からすぐに実践できるよう、私はNotionでテンプレート化しています。
空欄を埋めていくだけで、企画書の骨子が完成するよう設計されています。
私が普段の実務で使い倒しているこの「企画設計テンプレート」を含む、PdMの実務フォーマット一式をnoteで公開しています。
「もう企画書で悩みたくない」「無駄な手戻りをなくしたい」という方は、ぜひ使ってみてください。


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