「生成AI、結局どれを使えばいい?」
プロダクト開発の現場では、この質問を耳にしない日はないほどです。
私はPdMとして複数のチームを見ていますが、AI活用がうまくいくチームと空回りするチームの違いは、ツールの“数”でも“精度”でもなく、「どのフェーズで、どの目的で使うか」を決めているかどうかに尽きます。
この記事では、リサーチ・設計・実装・検証の4フェーズに分けて、PdMが実際に使うべき生成AIツールと、活用のコツ・注意点を紹介します。
生成AIツールは「目的」から選ぶ時代へ
AI導入が進むにつれ、ツール選定の基準は「精度が高いか」から「自分たちの意思決定にどう寄与するか」に変わりました。
ChatGPTやClaudeのような汎用モデルは強力ですが、PdMが求めるのは単なる生成力ではなく、“再現性のある意思決定”です。
「誰がどう使っても同じような品質で成果が出る」状態を目指すのがPdMの役割です。
そのためには、ツールごとに「強み」と「適用フェーズ」を整理して使い分ける必要があります。
以下では、私が現場で実際に試し、チーム導入したときに成果が出た具体例をもとに紹介します。
リサーチフェーズ:AI×定性分析の型
生成AIの真価が発揮されるのは、リサーチの初期段階です。PdMが抱える最大の課題は、「膨大な定性情報の整理」。ここをAIが支援してくれます。
- ChatGPT/Claude:ユーザーインタビューの文字起こしデータを貼り付け、「悩み・感情・目的」などのタグを自動分類。複数の回答を横断して「共通構造」を可視化できます。
- Notion AI:定性インサイトをチームノート上で整理する際に最適。インタビューを一文ごとにサマリー化し、要点だけを残すのに便利です。
- Dify+GPTs:社内ナレッジ検索の自動要約。既存のQ&Aや議事録から「過去に同様の課題を誰がどう解決したか」を探し出せます。
私のチームでは、Difyに全インタビューログを接続し、「AIに聞けば“過去のインサイト”が即座に返る」仕組みを作りました。これによりリサーチ会議の準備時間を70%短縮でき、課題検討の精度も上がりました。
設計フェーズ:仕様整理と要件定義の自動化
PdMの設計業務は、AIが最も“肩代わり”しやすい領域です。ただし、単純にPRDを自動生成するのではなく、「AIを伴走者」として使うことがポイントです。
- ChatGPT+Promptフォーマット:「背景」「課題」「目的」「成功指標」「依存関係」を入力すると、初稿のPRDを生成。AIが抜け漏れを指摘してくれる。
- Claude:文脈を長く保持できるため、過去の仕様書や議事録を参照しながら「前回の議論を踏まえた改善案」を提示可能。
- Notion AI:チーム合意の下書きを素早くまとめ、社内共有用のドキュメントへ整形。
私は「PRD初稿はAI、レビューは人間」というルールにしています。AIが“骨格”を作ることで、PdMの集中ポイントが「意図の精度」に変わり、時間あたりの成果が圧倒的に上がります。
実装フェーズ:開発生産性とUIライティング
エンジニアとデザイナーの連携でも、AIツールは有効です。特に「言語化の速度」を上げると、開発サイクル全体が滑らかになります。
- GitHub Copilot:コード補完だけでなく、関数意図やコメント生成も秀逸。エンジニアが黙々と考える時間を短縮します。
- Cursor:VSCode統合型のAIペアプログラマー。コードレビューや命名提案が自然で、フロント実装のラピッド化に向いています。
- Figma+UXライティングAI:ボタン文言やマイクロコピーをAIが提案。トーンを「カジュアル/フォーマル」で切り替えられるため、UX一貫性が保てます。
以前のプロジェクトで、Figmaのテキスト生成AIを導入した際、デザイナーとPdM間の「文言決めMTG」が半減しました。“文言を考える”時間が減り、“体験を磨く”時間が増える。これがAI導入の理想形です。
検証フェーズ:ログ分析と意思決定支援
AIは検証段階でも力を発揮します。特に「ログの意味づけ」と「意思決定支援」がPdMにとっての価値です。
- ChatGPT+SQL補助:「特定期間の離脱率を比較して」と自然言語で指示し、SQLを生成させる。アナリストが不在の場でも一次分析が可能。
- Dify+GA4連携:GA4データを自然言語で質問。AIが「どの施策が効果的だったか」をグラフ付きで返す。
- Notion AI:週次KPIレポートを自動要約し、異常値を検出してタグ付け。
AIによる一次分析を導入したことで、PdMの意思決定サイクルは「報告待ち」から「即判断」に変わりました。AIはレポートを“作る”のではなく、“考えるための時間”を生む存在です。
PdMが気をつけるべき“AIツール依存の罠”
AIツールは間違いなく強力です。しかし、「便利さ」には常に“理解の空洞”が付きまとうという点を忘れてはいけません。
典型的な失敗パターンは、「AIが書いたものをそのまま出す」こと。
例えば、ChatGPTが作成した企画書や要件定義書を、ほとんど修正せずにステークホルダーへ提出する──これは短期的には効率的に見えても、長期的には大きなリスクを孕みます。
実際に、あるPdMがAI生成の企画書をそのまま経営会議に持ち込み、プレゼンを行ったケースがありました。内容自体はよくまとまっていましたが、プレゼンを行う本人が中身を深く理解していなかった。
結果、経営層から「この前提の根拠は?」「リスク対応策は?」「なぜこの指標をKPIにしたのか?」と問われたとき、回答が曖昧で一貫性を欠いてしまったのです。
AIが出力した文章を理解せずに話すプレゼンほど、説得力を欠くものはありません。
理由はシンプルです。AIは構成を整えるのが得意ですが、“意図の筋道”までは設計しません。AIが生成した文言を「言葉」としてではなく、「ロジック」として自分の中に落とし込む作業を怠ると、説明の整合性が崩れ、会議の場で破綻します。
PdMにとってAIツールは「時間を短縮する助手」であり、「思考を代替する代理人」ではありません。
AIが出した提案の背景を読み解き、なぜその結論に至ったのかを自分の言葉で説明できて初めて、“AIを使いこなしている”状態です。
もうひとつの罠は、AIに考えさせた内容をチームにそのまま共有してしまうこと。
AIが出した案には、チームの文脈・制約・関係性が反映されていません。
それを共有すると「確かに正論だけど、現場には合わない」という反応が返り、チームの共感を得られなくなります。
だからこそ、PdMが意識すべきは、「AIの提案を“翻訳”する力」です。
AIが出したものを自分なりの言葉で再構成し、チームの現実に落とし込む。
この“翻訳”ができるPdMは、どんなAIツールを使っても成果を出せます。逆に、ここを怠るとどんな高性能なAIも、ただの“早い作文機”で終わってしまいます。
大切なのは、AIを「答えを出す相手」ではなく「問いを整理する相棒」として扱うこと。
設計の本質、そして最終責任は、常に人間であるPdMにあります。
まとめ:ツールで勝つのではなく、観察で勝つ
結局、生成AIツールの使いこなしで差がつくのは、“どの場面でAIに頼るか”の判断力です。
ツールの使い方を覚えるよりも、「AIが活きる余白をどう作るか」に時間を使う方が、PdMとしての価値は高まります。
次回は「生成AI企画の注意点」をテーマに、PoCで終わらない企画設計と、チームに浸透させるための実務フレームを紹介します。
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