「スクラムって“エンジニアのやつ”でしょ?」──配属初月の私は、会議室の隅でそう思っていました。ところが現場で効いたのは、スクラムをPdMの“意思決定エンジン”として使うやり方。Aha(初回価値)→TTV(到達時間)→翌日活性という先行指標を、スプリントという小さな賭けに落とし込む。今日は、ジュニアPdMが明日から動かせる
「最短で立ち上げ→回し切る」スクラム実装ガイドを、物語とテンプレでお届けします。
1. まず“何のために回すか”を決める(5分)
背景:スクラムは開発の儀式ではなく学習の器。
狙い:スプリントがAha/TTV/翌日活性のどれに効くかを一言で共有。
このリストで分かること:スプリント目標の最短作法。
スプリント目標の型:
このスプリントで、【対象ユーザー】の【◯◯行動】を
【Aha到達率/TTV/翌日活性 のいずれか】で【◯◯%】動かす。
先行指標の設計がまだ曖昧なら、まずは オンボーディング設計とTTV短縮の実践 を一読。
2. バックログは“課題→仮説→介入”の粒度で書く(30分)
背景:要望の山は優先できない。
狙い:課題ドリブンに並べ替え、DoR/DoDで品質担保。
このリストで分かること:今日から使えるテンプレ。
プロダクトバックログItem(PBI)の書き方
課題:Aha前の◯◯入力で離脱
仮説:不確実性が高く不安→事前サジェストで安心を提供
介入:候補自動表示/既存情報からの推定/ガイド文
メトリクス:Aha到達率+10pt、TTV-30%
DoR(Ready):対象セグメント/文面草案/計測方法が明記
DoD(Done):本番有効/イベント計測/ダッシュボード反映済
ユーザーストーリーの最短フォーマット
As:初回利用の◯◯ユーザー
I want:◯◯を自動で提案されたい
So that:迷わずAhaに到達できる
課題→要件→受入条件の書き分けは 仕様書/要件定義の書き方(現場テンプレ) がそのまま使えます。
3. 儀式は“短く鋭く”回す(タイムボックス)
背景:会議が長いとスクラムは嫌われる。
狙い:意思決定に必要な最小限だけに絞る。
このリストで分かること:各イベントの台本。
プランニング(45–60分)
- 前半:スプリント目標を一言で決める(先行指標に紐づけ)
- 後半:上位PBIから見積り(Tシャツサイズ/相対見積で十分)
- 出口:WIP(同時進行数)とブロッカーを明文化
デイリースクラム(10分)
昨日:先行指標に効いた事実は?
今日:スプリント目標に直結する一手は?
障害:誰の助けが要る?(その場で約束まで)
レビュー(30分)
- 見せるのは完成物ではなく学習(施策→先行指標→学び)
- 顧客/CS/営業を招き、次の賭けの材料を集める
レトロスペクティブ(30分)
Keep(続ける) / Problem(問題) / Try(試す) の3列に付箋
Tryは必ず1つに絞って、次スプリントのPBI化
4. 役割の握り方:PdMは“賭けのオーナー”
背景:責任の所在が曖昧だとスプリントは溶ける。
狙い:Driver/Approver/Contributor/Informer(DACI)で意思決定を固定。
このリストで分かること:役割と期待の明文化。
- Driver(PdM):課題仮説・PBI優先度・目標の合意形成
- Approver(EM/事業責任者):賭けの方向性に最終承認
- Contributor(Dev/Design/CS/IS):実装・実験・顧客接点
- Informer(関係者):学習共有のみ
合意形成のコツは 合意形成・ステークホルダー対応の基本 がショートカット。
5. “回り続ける”ためのSlack台本(コピペOK)
1) スプリント目標アナウンス
#dev-all
今スプリントの目標:
【対象】の【◯◯行動】を【Aha/TTV/翌日活性】で【◯◯%】動かす。
上位PBI:#PBI-123 / #PBI-128
計測:ダッシュボード「Sprint-◯◯」
ブロッカー:◯◯の承認待ち(@approver、今日◯時までに可否)
2) CS連携リクエスト
@cs-team
目的:Aha到達率↑(初回◯◯完了)
お願い:この文面でフォローDM(対象リストは添付)
計測:クリック率/完了率(2営業日で判定)
6. 見積り&進捗は“感覚より流量”で見る
背景:ベロシティ追跡だけだと先行指標に繋がらない。
狙い:フロー指標と先行指標の二軸で観測。
このリストで分かること:燃え尽きを避けるダッシュボード。
- Flow:WIP/リードタイム/ブロッカー時間
- Outcome:Aha到達率/TTV/翌日活性の週次変化
7. “最初の2スプリント”のロードマップ(14日)
背景:立ち上げ時は混乱しがち。
狙い:最低限で回して、学習を最大化。
このリストで分かること:明日からの手順。
- Day0:目標の一言を決める(先行指標に紐づけ)
- Day0:PBI 5–8個を仮説ベースで整列(DoR/DoD)
- Day1:プランニング→開発着手
- Day2–4:デイリー、ブロッカー解消の即断
- Day5:レビュー(学習共有)/ レトロ(Try=1)
- Day6–10:2本目スプリント、TryをPBI化して回す
スプリントの学びを戦略に接続するには OKR×ロードマップの組み立て方 が効きます。
8. 失敗あるある → こう直す
- 会議が長い:台本を使い、時間前に「目的/出口」を宣言。迷ったら先行指標に立ち返る。
- ToDo列が満席:WIP制限。優先度はPBIの“賭けの強さ”で再評価。
- デイリーが進捗報告会:「学習に寄与した事実」と「今日の一手」に限定。
- レビューがデモ会:完成物ではなく「施策→先行指標→学び」を見せる。
- レトロが雑談:Tryは1つに絞り、次スプリントのPBIに落とす。
9. そのまま使える“スクラム用テンプレ”一式
スプリント目標(1行)
対象:◯◯セグメント / 行動:◯◯ / 指標:Aha or TTV or 翌日活性 / 目標:◯◯%
PBIカード列
課題|仮説|介入|メトリクス|DoR|DoD|ブロッカー
デイリーの3問
昨日の学習・今日の一手・障害(誰に、いつまでに)
レビュー記録
施策 → 先行指標の変化 → 解釈(学び) → 次の賭け
レトロ付箋
Keep / Problem / Try(1つ)
10. “先の一手”に繋がる関連記事
- ユーザーインタビュー完全ガイド(質問例&失敗回避):課題仮説の燃料を入れる。
- 仕様書/要件定義の書き方(現場テンプレ):PBI→要件→受入条件の整備。
- オンボーディング設計とTTV短縮の実践:目標とKPIの設計。
- 合意形成・ステークホルダー対応の基本:意思決定の速度を上げる。
まとめ:スクラム=“賭けを早く回す仕組み”
スクラムは儀式ではなく、先行指標を動かすための学習装置。小さく賭けて、速く学ぶ。今日の一歩は、スプリント目標を一行で書き、PBIを“課題→仮説→介入”に直すところから。回しながら精度は上がります。止まらないことが、最大の生産性です。
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