会議で「このアクティブって誰基準?」と聞いた瞬間、空気が固まる——数字はあるのに決め切れない。その原因はルックやSQLではなく、決め方が決まっていないことにあります。
結論:データガバナンスとは、数字の“意味”と“決め方”を統一する仕組み(責任・基準・変更権限)で、PdMが5分で意思決定できる状態をつくることです。
- 1. データガバナンスの正体:なぜ必要か(ねらい→やること→効く場面)
- 2. まず覚える4つの書類:ポリシー/標準/手順/ガイドライン
- 3. 役割の最小構成:オーナー/スチュワード/カストディアン/利用者
- 4. 「変更できる道」をつくる:申請→レビュー→承認→反映→告知
- 5. メタデータ(用語・計算式)を1か所に:定義カードの作り方
- 6. 品質ガードレール:壊れたら“止める→直す→再開”
- 7. PRDと接続する:非スコープ→基準→評価(1枚断片の雛形)
- 8. 成功の測り方(先行指標):ガバナンスが“効いている”状態
- 9. 導入ロードマップ(14日版):ゼロからでもここまで
- 10. よくある誤解と直し方
- FAQ(見えるブロック)
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- テンプレ完全版(PDF)
1. データガバナンスの正体:なぜ必要か(ねらい→やること→効く場面)
ねらいは「同じ定義で同じ判断を再現」すること。やることは①責任の明確化(誰が決める)②基準の明文化(何をどう決める)③変更の手順(いつどう変える)の3点だけ。効く場面は、優先順位付け、PRDレビュー、リリース判定、採用面接の説明など“決める”全てです。
価値と短期運用の全体像はここが基礎です。課題解決型PdM 完全ガイド/価値提供型PdMの設計図で全体像がつながります。
2. まず覚える4つの書類:ポリシー/標準/手順/ガイドライン
「ルールの紙」を1枚に混ぜると混乱します。役割が違うからです。最小単位で下記の区別をつければOK。
【用語の使い分け(そのまま貼ってOK)】
ポリシー:守る“原則”。例)定義の最新版は1つだけ。変更は承認制。
標準(スタンダード):測定・命名・権限などの“基準”。例)Ahaはイベントsave_success。
手順(プロシージャ):誰が何をいつやるかの“手順”。例)定義変更は申請→レビュー→承認→反映→告知。
ガイドライン:判断を支える“考え方”。例)週次は先行指標のみ、遅行は四半期で評価。
3. 役割の最小構成:オーナー/スチュワード/カストディアン/利用者
大人数は不要。PdM現場なら4役で十分回ります。RACIを決めれば責任の押し付け合いが消えます。
【RACIテンプレ(コピペ)】
対象:Aha達成率の定義
Owner(責任/R):PdMリード
Steward(運用/A):データ担当(定義カード更新)
Custodian(保全/C):エンジニア(計測実装)
Consumer(利用/I):CS・Biz(活用と問い合わせ)
承認権限:Owner→Stewardの2者で可決(代替:プロダクトオーナー)
4. 「変更できる道」をつくる:申請→レビュー→承認→反映→告知
ガバナンスは“固める”ことではなく、“正しく変えられる”こと。変更フローをテキストで固定しておきます。
【変更フロー(最小)】
1) 申請:Notion/フォーム「用語名・現行定義・変更理由・影響範囲・希望日」
2) レビュー:Stewardが整合性チェック(計算式・イベント・ダッシュボード)
3) 承認:OwnerがGo/No-Go。代替案は日時付きで提示
4) 反映:定義カード→クエリ→ダッシュボード→PRD断片の順に更新
5) 告知:Slack #release-data に“変更差分と施行日”を投稿(雛形下)
【Slack告知テンプレ】
対象:Aha達成率(save_success)
変更:未ログの体験を除外(連続成功の重複排除)
施行:2025-09-01 00:00
影響:TTV集計の母数変更→PRD断片を更新済み(KRは差分で評価)
5. メタデータ(用語・計算式)を1か所に:定義カードの作り方
「この数字って何?」が消える核心が定義カードです。目的は“最新版が1つだけ”になること。シート/Notionで始められます。
【定義カード(列の見本)】
用語|説明(体験ベース)|計算式/SQL|イベント名|所有者(RACI)|施行日|最終更新
Aha達成率|初回の価値を体験した比率|count(distinct user_id where event=save_success)/count(distinct user_id)|save_success|Owner=PdM R / Steward=Data A|2025-09-01|2025-09-01
計測の並べ方はKPI設計と運用ガイドが最短です。
6. 品質ガードレール:壊れたら“止める→直す→再開”
美しいDWHより“止血”の速さが効きます。最低限の検知とルールだけ先に決めておきます。
- 必須イベント欠損:save_success・resume_openedが0なら日次集計を停止し告知。
- 重複・異常:同一ユーザーの連続成功は1回に集約/TTVが負の値は除外。
- バージョン管理:定義の施行日を保持。比較は“差分(+pp/−分)”で読む。
7. PRDと接続する:非スコープ→基準→評価(1枚断片の雛形)
定義を作って終わりではなく、毎週の意思決定に直結させます。PRD断片は“線引き→基準→評価”の順で1枚に。
【PRD断片(貼るだけ)】
非スコープ:定義のない数値を会議に持ち込まない
基準(標準):Aha/TTV/D1は定義カードに紐づく版のみ採用
評価(KR):Aha +5pp/TTV P50 −2分/翌日活性 +4pp(旧比)
撤退条件:Aha +3pp未満 × TTV悪化 → 旧版へロールバック
8. 成功の測り方(先行指標):ガバナンスが“効いている”状態
「導入したつもり」で終わらせないために、先行KPIを決めておきます。数字は相対でOKです。
- 定義の合意時間:提起→承認までの中央値が1営業日以内。
- PRDレビュー時間:1件あたり10分以内(説明ではなく判定)。
- 指標の差分把握率:週次でAha/TTV/D1の差分(+pp/−分)が“即答”できる。
- 巻き戻り頻度:定義変更が原因の再計測が月1回未満。
9. 導入ロードマップ(14日版):ゼロからでもここまで
大規模な仕組みは不要。2週間で“回る最小”を形にします。必要なのはテキストと習慣だけです。
- Day1-2:ポリシーと標準を1枚化(本文の雛形でOK)
- Day3-4:RACI決定(Aha/TTV/D1・集計クエリ・ダッシュボード)
- Day5:定義カード(20語)を作成・公開
- Day6:変更申請フォーム(Notion/Googleフォーム)を整備
- Day7:Slack #release-dataを開設(告知テンプレ固定)
- Day8-9:品質チェック(欠損・重複・異常)を自動化 or 手動点検
- Day10:PRD断片を更新し、会議台本を配布
- Day11-12:テスト変更を1件まわしてみる(申請→反映→告知)
- Day13-14:ふりかえり→ポリシー/標準の改訂
10. よくある誤解と直し方
- 誤解:「ガバナンス=締め付け」。
→ 直し方:“正しく変えられる”ための道(変更フロー)が本体。迅速化が目的。 - 誤解:「専用ツールがないと無理」。
→ 直し方:最初はシート/Notionで十分。最新版が1つあれば回る。 - 誤解:「全部の指標を一気に定義」。
→ 直し方:Aha/TTV/D1の3つから。残りは週次で追加。
FAQ(見えるブロック)
- Q. まず何から始めればいいですか?
- A. 本文の「ポリシー/標準/手順」を1枚にまとめ、RACIと変更フォームを先に作るのが最短です。
- Q. 売上やNPSを毎週の会議に入れなくて大丈夫?
- A. 週次は先行指標(Aha/TTV/D1)で判定し、遅行は四半期レビューに分離してください。
- Q. 小さなチームでも意味がありますか?
- A. むしろ小規模こそ効果が大。定義の“最新版1つ”と変更の“道”ができれば、議論の迷いが消えます。
テンプレ完全版(PDF)
ポリシー/標準/手順の1枚テンプレ、RACI、変更フロー、品質チェック、会議台本をまとめました。
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