「同じユーザーなのにダッシュボードでは2人に見える」「部署ごとに“商品ID”が違う」——これでは意思決定が割れます。
結論:参照・マスタ管理(RDM/MDM)は、「同じ現実をひとつのIDで表し、迷いなく決める」ための仕組みです。PdMはID設計→候補選定→重複解消→運用の順で整えれば、Aha/TTV/翌日活性の読みがブレません。
- 1. RDM/MDMの全体像(ねらい→やり方→失敗と直し方)
- 2. 参照データとマスタデータの違い(まず言葉をそろえる)
- 3. ID設計の原則(貼るだけテンプレ)
- 4. 候補選定の手順(データ源→照合→代表ID決定)
- 5. 重複解消のルール(擬似コード/そのまま合意文)
- 6. PRD断片:非スコープ→基準→評価(Aha/TTV/D1に接続)
- 7. “毎日4枚+1枚”の見方(ダッシュボード運用)
- 8. 現場で使える“ひな形”(コピペOK)
- 9. Slack定型文&10分レビュー台本(読み上げで終わる)
- 10. 7日ロードマップ(ゼロから導入)
- 11. ありがちな失敗と回避策
- FAQ(見えるブロック)
- 関連記事
- MDM運用テンプレ(PDF)
1. RDM/MDMの全体像(ねらい→やり方→失敗と直し方)
ねらいは、指標と顧客・商品・組織が一対一に結び付く状態を作り、議論を5分で終わらせること。やり方は、①IDの原則を決める→②データ源を洗い出す→③重複・矛盾を解消→④変更できる道を作る、の4段。失敗は、いきなりツールで“統合っぽさ”を演出すること。直すなら、まずID規約とマージ基準をテキストで合意します。
意思決定と価値づくりの全体像は、課題解決型PdM 完全ガイド/価値提供型PdMの設計図で基礎から確認できます。
2. 参照データとマスタデータの違い(まず言葉をそろえる)
用語が曖昧だと運用が壊れます。2つの区別だけ掴めば十分です。ここが分かるとPRD・ダッシュボードの線引きが一気に楽になります。
- 参照データ(RDM):都道府県コード、通貨、業界分類など“滅多に変わらない辞書”。
→ 正しさと一貫性が命。値の増減は稀、改訂は“版管理”。 - マスタデータ(MDM):ユーザー、商品、契約など“同じ現実を特定するデータ”。
→ 重複や表記揺れが発生。同一性の判定と代表IDが命。
3. ID設計の原則(貼るだけテンプレ)
IDは“変わらない・一意・読まない”。人間が目で読むラベルは別列に。ここがぶれるとAha/TTV/D1の母数が崩れます。
【ID設計の原則】
・不変性:意味の変更や再発行で値を変えない(内部IDは乱数/UUID)
・一意性:システム全体で重複しない(名前やメールはIDにしない)
・不可読性:意味のある桁(部署/地域)を埋め込まない
・永続性:削除でもIDは再利用しない(退会フラグ/有効期限で表現)
・外部キー:他システムIDは「紐付けテーブル」で扱う(主IDは1つ)
4. 候補選定の手順(データ源→照合→代表ID決定)
現場では「どれを主とするか」が一番揉めます。感覚で決めず、スコアで決めるのがコツ。最初は手で十分、後から自動化します。
- データ源の棚卸し:プロダクトDB、CRM、決済、CSツールなどの“人・物・契約”の出どころを列挙。
- 照合キーを準備:メール、電話、氏名(標準化)、生年月日、住所コードなど“比較に使える列”を正規化。
- マッチングスコア:完全一致=2点、あいまい一致=1点、矛盾=−1点など、合計点で同一候補を抽出。
- 代表IDの決定:同一と判断された行に“代表フラグ”を付け、主IDを新規発行(既存IDは別テーブルで保持)。
5. 重複解消のルール(擬似コード/そのまま合意文)
毎回“職人芸”になると再現性が落ちます。重複の線引きを言語化し、施行日付きで運用するとトラブルが減ります。
rule email_exact_match: 2pt(trim/小文字化後の完全一致)
rule phone_normalized: 2pt(国番号/ハイフン除去)
rule name_fuzzy_match: 1pt(全角半角/かな漢字のゆらぎ吸収)
rule birthdate_match: 1pt(yyyy-mm-dd完全一致)
rule conflict_address: -1pt(都道府県コードが矛盾)
merge if score ≥ 3pt
promote representative = latest_active_record() # 直近の有効記録を優先
preserve all source_ids in link_table # 由来は別テーブルで保持
施行日: 2025-09-01
6. PRD断片:非スコープ→基準→評価(Aha/TTV/D1に接続)
マスタを作って終わり、は一番の罠。会議で“読める数字”に直結させます。下記の断片をPRDに貼ってください。
【PRD断片】
非スコープ:外部IDを主キーにしない/人手判定のみでマージしない
基準:主ID=内部UUID。外部IDはlink_tableで多重保持。重複はscore≥3でマージ
評価(KR):Aha達成率 +4pp/TTV P50 −1.5分/翌日活性 +3pp(ID整備前比)
撤退条件:問い合わせ増加×Aha悪化 → 施行前へロールバック(施行日注記)
7. “毎日4枚+1枚”の見方(ダッシュボード運用)
IDの整理は効果検証まで一筆書きで。指標は先行3+新規比率、加えて“マスタ健全性カード”を1枚用意します。
- Aha達成率/TTV P50・P95/翌日活性/新規比率。
- マスタ健全性:重複候補件数(週次推移)/手動判定残件/マージ失敗率/施行日。
計測の並べ方はKPI設計と運用ガイドが最短です。
8. 現場で使える“ひな形”(コピペOK)
Notion/スプレッドシートでそのまま回せる型です。小さく始めて、回り出したら自動化で置き換えます。
【マスタリンク表(master_links)】
主ID|source_system|source_id|確信度(0-1)|最終更新|施行日
【重複レビュー表(dedupe_review)】
候補ID1|候補ID2|score|判定者|判定(merge/keep)|理由|施行日
【辞書(RDM)表】
コード|ラベル|開始日|終了日|版|備考
9. Slack定型文&10分レビュー台本(読み上げで終わる)
説明会ではなく判定会に。差分→健全性→入替宣言の3点で閉じます。Slackは施行日と影響幅を必ず書きます。
【Slack #release-data】
対象:ユーザーMDM(重複マージ基準=score≥3)施行=2025-09-01
影響:重複候補 1,240 → 320(-74%)、Aha +2.3pp 見込み
運用:link_tableに元ID保持。問い合わせはCS経由で #data-ops へ
【10分レビュー台本】
[00-03] 先週差分(Aha/TTV/D1)+健全性カード(重複候補/残件/失敗率)
[03-07] 入替宣言(撤退/継続/新規)→PRD断片に反映
[07-10] リスク確認(法務/プライバシー/計測)。施行日の縦線をダッシュボードに
10. 7日ロードマップ(ゼロから導入)
「最低限で回す」ことに集中します。運用が回り出してから仕組みを厚くします。
- Day1:ID原則と重複スコア表を1ページで合意。
- Day2:データ源の棚卸しと照合キーの正規化(小文字化・ハイフン除去)。
- Day3:重複候補を抽出→dedupe_review表を作成。
- Day4:代表IDの付与とmaster_links表の運用開始。
- Day5:ダッシュボードに“マスタ健全性カード”追加、施行日縦線。
- Day6:CS/営業と問い合わせ運用(旧ID→新ID照会)を整備。
- Day7:効果判定→次のルール改訂(±1ptなど)を告知。
11. ありがちな失敗と回避策
- 外部IDを主キーに採用:提供元の仕様変更で崩壊。内部UUID+link_tableで吸収。
- 人手onlyでマージ:疲弊して止まる。スコアで足切り→“人は境界だけ”。
- 意味のある桁をIDに埋め込む:組織改編で破綻。意味は属性列に分離。
- 施行日の未管理:グラフが壊れる。必ず施行日で分割し、影響幅をSlackで告知。
FAQ(見えるブロック)
- Q. 小規模でもMDMは必要?
- A. はい。小規模こそ“同じ現実を1つのID”で表せると、Aha/TTV/D1の読みが早くなり、改善の入替が速くなります。
- Q. 代表IDは既存のメールで代用できますか?
- A. 推奨しません。メールは変わります。内部UUIDを主にし、メールは属性/外部キーで扱ってください。
- Q. 手動レビューが追いつきません。
- A. スコアで5段階に分け、上位(自明)を自動マージ、境界だけ人手に。週次で基準をチューニングします。
Aha→TTV→翌日活性の順で判断が速くなります。詳細はKPI設計と運用ガイドをどうぞ。
MDM運用テンプレ(PDF)
ID設計原則/重複スコア表/リンク表/PRD断片/レビュー台本を1ファイルに。
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