朝の定例で「アクティブは昨日比−3%」と誰かが言い、別の誰かが「それ、閲覧だけも入ってます?」と返す——途端に空気が止まって会議が延びる。原因は難しい分析ではなく、言葉の意味が人によって違うことです。
結論:メタデータ管理とは、用語の意味・計算式・イベント名を“最新版ひとつ”に揃え、誰が見ても同じ数字になる状態を作る運用です。
意思決定と価値づくりの全体像は課題解決型PdM 完全ガイド/価値提供型PdMの設計図で土台から確認できます。
1. なぜ今すぐ必要?(ねらい→やり方→失敗と直し方)
ねらいは「同じ言葉で同じ判断」を再現すること。やり方は、用語集(データ辞書)とイベント定義を作り、命名規約と変更フローで維持すること。失敗は、BIツールの見た目調整から入ってしまうこと。直すなら、まず“言葉と式”を1箇所に固定し、全てのダッシュボードをそこへ紐づけます。
2. まず押さえる3要素:用語集/イベント定義/命名規約
土台はこの3つ。特にイベント定義は「Aha(初回価値)」「翌日活性(D1)」の2本を最初に確定すると運用が一気に回ります。
- 用語集(データ辞書):言葉の意味と計算式の“最新版”。
- イベント定義:どの操作がどのイベント名で記録されるかの契約。
- 命名規約:snake_case/kebab-case、接頭辞、過去形の扱いなど統一ルール。
3. 用語集テンプレ(コピペOK:Notion/スプレッドシート)
まずは20語から。PdMが読む前提で“体験ベースの説明”にします。SQLが書けなくても読める形に。
【列構成】
用語|説明(ユーザー体験)|計算式/SQLの要約|イベント/列名|責任(R/A/C/I)|施行日|最終更新
【例】
Aha達成率|初回の“価値が出た瞬間”を体験した割合|save_success を1回以上記録したユーザー/当日利用ユーザー|event=save_success|PdM=R Data=A Eng=C CS=I|2025-09-01|2025-09-01
翌日活性(D1)|Aha翌日に“直行”で戻った割合|Aha達成翌日に resume_opened を記録/当該Aha達成ユーザー|event=resume_opened|PdM=R Data=A Eng=C CS=I|2025-09-01|2025-09-01
TTV P50|初回起動→Aha達成までの中央値|percentile_50(timestamp(save_success)-timestamp(first_open))|first_open/save_success|PdM=R Data=A Eng=C CS=I|2025-09-01|2025-09-01
4. イベント定義ひな形(そのまま貼るだけ)
イベントは“体験の境目”で切るのがコツ。クリックではなく価値の発生(保存成功など)で定義します。
【イベント定義(最小セット)】
name: save_success
desc: 初回価値の達成(例:保存が成功し成功トースト表示)
props: { content_type, template_id, source("web","app"), plan }
rules:
- 同一セッション内の連続成功は1回に集約
- 成功トースト表示と同時に発火(失敗時は発火させない)
name: resume_opened
desc: Ahaの翌日に“直行”で再開した
props: { deeplink("continue"), from_notification(bool) }
rules:
- Aha当日の再来は含めない(翌日00:00以降)
- 直行導線(ボタン/通知リンク)経由のみを母数にする
name: first_open
desc: 初回起動のタイムスタンプ
props: { platform, version }
rules:
- webは初回cookie/ログイン時刻、appは初回インストール/初回起動
5. 命名規約(最小の決め方)
命名の揺れは再発の元。最初にルールを書いておくと、データ追加のたびに迷いが消えます。
- イベント名:過去形の動詞+成果(例:
save_success)。 - プロパティ:スネークケース、単位を含めない(
elapsed_secなど例外のみ)。 - カテゴリ:
onboarding_*のように接頭辞でまとまる粒度に。
6. 変更フロー(申請→レビュー→承認→反映→告知)
定義は変わり続けます。大事なのは“正しく早く変えられる道”。テンプレはこれで足ります。
【申請フォーム項目】
対象用語/イベント|現行定義|変更案|理由(不整合/品質/計測追加)|影響範囲(ダッシュボード/PRD)|希望施行日|担当
【告知テンプレ(Slack #release-data)】
対象:Aha達成率(save_success)
変更:連続成功の重複を集約
施行:2025-09-05 00:00
影響:Aha達成率 −1.2pp 程度(過去比較は施行日で分割)
7. 10ステップ導入ロードマップ(ゼロから)
大掛かりなDWHや専用ツールは後回し。まずは“回る最小”を形にします。1〜3は今日中に可能です。
- 用語集シートを作成(列は「用語/説明/式/イベント/責任/施行日/最終更新」)。
- Aha、翌日活性、TTVの3語だけ先に埋める。
- イベント定義3本(first_open/save_success/resume_opened)を確定。
- 命名規約を1ページで明文化(イベント名/プロパティ/カテゴリ)。
- 変更フローの申請フォームをNotion/Googleフォームで用意。
- Slackに #release-data を作成、告知テンプレをピン留め。
- ダッシュボードの計算式を用語集の式に差し替え(参照リンクで紐付け)。
- PRD断片に「定義カードの版のみ採用」を明記。
- 週次で“差分(+pp/−分)”の読み上げ→撤退/継続/新規の入替をログ化。
- 施行日を境にグラフを分割表示し、巻き戻りを防止。
8. よくある落とし穴と回避策
現場で必ず出る“つまずき”に先回りしておきます。迷ったら「定義カードに戻る」が合言葉です。
- クリックをAhaにしてしまう:価値の発生(保存成功など)で定義する。
- 翌日活性の母数が日によって違う:「Aha翌日の直行のみ」を母数に固定。
- 施行日が曖昧:定義カードに必ず施行日を記録、グラフ分割は必須。
- PRDに定義が未反映:PRDレビューのチェック項目に「定義カードURL」を追加。
Aha→TTV→翌日活性の並べ方はKPI設計と運用ガイドが最短です。
9. 会議10分台本&Slack定型文(読み上げで終われる)
説明会をやめ、判定会に。差分で言い切り、変更は“施行日つき”で告知します。
【会議10分台本】
[00-02] 先週差分:Aha +pp/TTV −分/翌日活性 +pp(施行日またぎは分割)
[02-05] 定義変更の報告(対象・理由・影響・施行日)
[05-08] PRD断片の更新(定義カードURLを追記)
[08-10] 撤退/継続/新規の入替宣言(5行ログに記録)
【Slack定型文】
定義カードを更新:Aha達成率(重複集約)。施行=9/5。
今週KR:Aha +5pp/TTV −2分/翌日活性 +4pp。撤退条件はAha +3pp未満×TTV悪化。
10. 今日から使える“完成チェックリスト”
この5つが揃っていれば、メタデータ管理は回り始めています。足りない項目から埋めましょう。
□ 用語集(20語)は最新版が1つに集約されている
□ イベント定義(first_open/save_success/resume_opened)が合意済み
□ 命名規約があり、新規データ追加時に参照されている
□ 変更フロー(申請→承認→施行→告知)が実行された実績がある
□ ダッシュボードは“用語集の式”を参照し、施行日で分割されている
FAQ(見えるブロック)
- Q. 専用のデータカタログツールがないと始められませんか?
- A. いいえ。まずはNotion/スプレッドシートで十分。重要なのは“最新版が1つ”という運用です。
- Q. Ahaの定義がチームで議論になります。
- A. 体験ベースの文(例:「保存が成功し成功トーストが表示された瞬間」)で先に合意し、SQLは後追いで構いません。
- Q. 定義を変えると過去比較が壊れます。
- A. 施行日でグラフを分割し、「前後は別系列」として扱います。告知テンプレで影響幅を明記してください。
テンプレ完全版(PDF)
用語集テンプレ/イベント定義ひな形/命名規約/変更フロー/会議台本を1ファイルに。
PdM初心者のための仕事大全【保存版】 /
PdMキャリア戦略:ゼロイチ〜スケールの実務
特典:PdMスキルテンプレート集(PDF)/キャリア戦略シート(PDF)


コメント