結論:ビルドトラップは「機能で会話する」から起こります。Aha→TTV→翌日活性(D1)の“成果の線”で決める運用に切り替えれば脱出できます。
深夜のタスク会議。「機能は増えたのに、なぜ使われない?」空気が重くなるたび、私はPdMのマネージャーとして、会話の主語を“成果”へ戻します。機能名や画面の色ではなく、「誰のAhaを、どれだけ速く、翌日にどう繋げたか」。この言語だけで、会議の摩擦は減り、スプリントは軽くなります。本稿は、現場でそのまま使える“脱出の5ステップ”を台本つきでまとめました。
意思決定と価値づくりの両輪はここが基礎です。課題解決型PdM 完全ガイド/価値提供型PdMの設計図で全体像がつながります。
1. 症状を見極める:機能は出るのに成果が増えない“静かな赤信号”
朝会での報告は賑やかなのに、数字は動かない——これが典型です。バックログは“やりたい”で溢れ、リリースノートは長編小説。にもかかわらずAha(初回価値到達率)は伸びず、TTV(価値到達時間)は短くならず、翌日活性(D1)は横ばい。議論は“やる/やらない”の主観合戦になり、誰も撤退を言い出せない。まずは症状を言語化して、同じ風景を見ます。
要点:機能ではなく成果の停滞が本質/Aha・TTV・D1が動かない/会話が作業名詞化/撤退条件がない/前後比較が無い。
【症状チェックリスト(コピペ可)】
- リリース報告は多いがAha到達率が伸びない
- TTVは平均のみで中央値や分布を見ていない
- D1の分母(新規/既存)が混ざっている
- バックログに撤退条件の欄がない
具体例:「検索条件を3つ追加」で盛り上がった週、Ahaは微動だにせず。中央値TTVの分布を見ると“分岐残り”が原因と判明しました。
まとめ:まず“静かな赤信号”を言語化。Aha/TTV/D1で現実を合わせる。
2. 原因を特定する:主語のズレ(機能主語)と測り方の欠落
多くの現場で、主語は「我々の機能」になっています。仕様レビューはUIと色、進捗会は作業の消化率。測り方も平均TTVやPVで、肝心のAhaとD1が希薄。これでは、作った実感はあっても成果が見えない。主語を“ユーザーの達成”に戻し、測り方を率+中央値(前後2週間)に揃えるだけで、原因の輪郭が現れます。
要点:主語をユーザー達成へ/Aha=率、TTV=中央値、D1=翌日再開/平均のみはNG/分岐残りを特定/代理指標で補強。
【測り方テンプレ(コピペ可)】
Aha:到達率 +◯pt(新規のみ)
TTV:中央値 -◯%(初回導線/分布併記)
D1 :翌日活性 +◯pt(副:再開TTV -◯%)
副次:成功トースト閲覧率/Aha関連問い合わせ率
具体例:平均TTVだけを追っていたチームで、中央値+分布に切替えた途端、導線の岐れ目で外れ値が集中していると分かりました。
まとめ:主語と測り方を正す。数字の読み替えが脱出の始発です。
3. 設計を変える:PRDを“一枚化”し、Non-Goalと撤退条件を先に置く
分厚いPRDは、ビルドトラップの温床です。最初にGoal/Why/Trade-off(G/W/T)を一枚で言い切り、目的は差分文(Aha+◯pt/TTV-◯%/D1+◯pt)に。Non-Goalと撤退条件を先出しすれば、膨張は止まる。UI細部は“変更窓24h”に逃がし、決める速度を守ります。
要点:目的は“達成の一文”/阻害の特定(定性n=5+ログ)/Non-Goal明記/撤退条件=前後2週間で判定/変更窓24h。
【一枚PRDテンプレ(コピペ可)】
Goal:新規◯◯が「30秒で◯◯できた」(Aha)
Why:用語難/分岐過多でTTVが長い
Trade-off:外部連携/全面改修は非スコープ
Metric:Aha +◯pt / TTV中央値 -◯% / D1 +◯pt(前後2週間)
撤退条件:Aha +◯pt未満なら停止(代替案Bへ)
変更窓:UI細部は合意後24hで軽微修正のみ
具体例:「説明動画を作る」案はNon-Goalへ送り、「説明2行+候補即表示」の1SPで検証。Ahaが立ち、動画は不要になりました。
まとめ:設計は“一枚+捨てる宣言”。撤退条件が現場を救う。
4. 運用を変える:レビュー10分台本で“決める会”に戻す
読み合わせ会は終わりにしましょう。結論(色判定)→論点3つ→Decision→変更窓→宿題の10分台本で、合意を最短化します。RICEは最後の並び替え専用。Slackには毎朝、Aha/TTV/D1の一枚画像を自動配信し、週次は前後比較で“学び→次手”だけを言います。
要点:色を冒頭で宣言/論点は3つまで/Decision先出し/変更窓24h/自動配信で習慣化。
【レビュー台本(コピペ可)】
結論:Aha +◯pt(緑)/ TTV -◯%(黄)/ D1 +◯pt(赤)
論点:1) 分岐残り 2) 説明2行 3) 再開導線
決定:今週 1SP×2(説明2行/導線1本化)
変更窓:UI細部は24hで微修正OK
宿題:定性n=5を週内、次回◯/◯判定(Decision PdM)
具体例:“全員の意見”を順番に聞いていた会議は、台本化で10分に。実装の着手が早まり、翌週のD1が底上がりました。
まとめ:会議は“決める装置”。台本と自動配信が速度を保証する。
5. 文化に落とす:成果の言語で話し、資料は“直着”、回遊はしない
最後に効くのは言語とルールです。感想語(簡単/直感的)は、差分語に置換。「30秒で◯◯できた」「再開TTV -◯%」のように話す。資料は“直着”で送り、社内ポータルの回遊を作らない。役職を問わず“線外(Aha/TTV/D1に効かない)”は変更窓へ送る。これだけで、ビルドトラップへ戻りにくい組織になります。
要点:主観語→差分語へ/直着導線/線外は変更窓/撤退の称賛/1SPの習慣。
【言い換え表(コピペ可)】
NG:直感的にわかるUI → OK:説明2行でAha +◯pt
NG:回遊を増やしたい → OK:再開TTV -◯%でD1 +◯pt
NG:全部入れたい → OK:線外は変更窓、撤退は称賛
具体例:「センスが…」という指摘は、「Aha+◯pt/TTV-◯%に寄与しない」で置換。議論が因果の芯に戻りました。
まとめ:言語が文化を作る。差分で語り、直着で渡す。
有料note(特典あり)
テンプレは下記にまとまっています(特典PDF:PdMスキルテンプレート集/キャリア戦略シート)。
FAQ
- Q. 数字が弱いとき、意思決定は止めるべき?
- A. 止めません。相対差分(+◯pt/-◯%)と中央値+代理指標(トースト閲覧率/問い合わせ率)で前後2週間の判定を回します。
- Q. 役員から“機能リスト”の要望が来た場合は?
- A. “成果の面”で返します。Aha/TTV/D1の位置とNextの1SPを一枚サマリで直着。機能名は変更窓で扱います。
- Q. RICEは使わないの?
- A. 使いますが最後の並び替え専用。一次判定は価値線(Aha→TTV→D1)です。


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