結論:ビルドトラップは「機能の量」で会話する状態で、Aha→TTV→翌日活性(D1)の“成果の線”に戻せば抜けられます。
深夜のレビュー。チケットは消化されたのに、誰も「昨日より良くなった」と言い切れない——そんな夜を何度も見てきました。PdMのマネージャーとして私が最初にやるのは、会話の主語を“機能名”から“成果の差分”へ戻すこと。誰が何を「できた」と言えるようになったか(Aha)、そこに辿り着く速さ(TTV)、翌日も続いたか(D1)。本稿はシリーズ第1回として、定義と見分け方、そして初動14日の型を一枚にまとめます。
意思決定と価値づくりの両輪はここが基礎です。課題解決型PdM 完全ガイド/価値提供型PdMの設計図で全体像がつながります。
1. 定義と見分け方:賑やかな出荷、静かな成果(ここが赤信号)
「機能が増えた=前進」と誤解した瞬間から、ビルドトラップは始まります。朝会は賑やか、リリースノートは長文、でもAhaは伸びず、TTVは短くならず、翌日活性も横ばい——この“静かな赤信号”を最初に見つけましょう。大事なのは、作業名詞ではなく“成果の差分”で語ることです。
要点:1) Aha/TTV/D1が動かない 2) 進捗=チケット消化の報告 3) 議論がUI色や仕様の作り込みへ逸脱 4) 撤退条件なし 5) 前後比較の証拠が無い。
具体例:検索条件追加で盛り上がった週、Ahaは横ばい。中央値TTVの分布を見ると“分岐残り”が原因と判明しました。
【症状チェックリスト(コピペ可)】
- リリースは多いが、Aha到達率が+◯ptしない
- TTVを平均だけで見ており、中央値/分布が無い
- D1の分母(新規/既存)が混ざっている
- バックログに撤退条件の欄が無い
まとめ:賑やかな出荷と静かな成果が同居したら、ビルドトラップの合図です。
2. 測り方の再設計:率+中央値で“成果の線”を固定する
ビルドトラップの正体は“測り方の欠落”です。Ahaは新規ユーザーの到達率、TTVは中央値と分布、D1は再開TTVを副指標として併記。代理指標(成功トースト閲覧率/問い合わせ率)を添えると、数字が薄い局面でも議論が進みます。ここを先に揃えれば、会議は“作業の羅列”から“成果の線”に戻ります。
要点:1) Aha=率(新規) 2) TTV=中央値+分布 3) D1=翌日の継続+再開TTV 4) 代理指標で補強 5) 前後2週間で判定。
具体例:平均TTVで“効果なし”に見えた改善も、中央値へ切替えた途端に短縮が見え、次の一手が決まりました。
【イベント/指標テンプレ(コピペ可)】
aha_reached(新規のみ)
onboarding_flow_start / complete
toast_success_shown / seen
resume_card_view / resume
指標:Aha +◯pt / TTV中央値 -◯% / D1 +◯pt(副:再開TTV -◯%)
まとめ:測り方が土台。率+中央値+副指標で“線”を作ります。
3. PRDの書き換え:目的は“達成の一文”、Non-Goalと撤退条件を先に
分厚いPRDは罠の温床。目的は“誰が何をできたか”の一文(Aha)で言い切り、Whyは阻害(用語難/分岐過多)を一行、Trade-offで捨てる物を明記。目的は差分文、検証は前後2週間。UI細部は“変更窓24h”で後送りにして、決める速度を守ります。
要点:1) Goal=達成の一文 2) Why=阻害の特定 3) Trade-off=非スコープ宣言 4) 撤退条件を先に 5) 変更窓で細部を捌く。
具体例:「動画チュートリアル」よりも「説明2行+候補即表示」の最小差し替えでAhaが立ち、動画は不要になりました。
【一枚PRD断片(コピペ可)】
Goal:新規◯◯が「30秒で◯◯できた」(Aha)
Why:用語難/導線分岐でTTVが長い
Trade-off:外部連携/全面改修は非スコープ
Metric:Aha +◯pt / TTV中央値 -◯% / D1 +◯pt(前後2週間)
撤退条件:Aha +◯pt未満なら停止、代替案Bへ
変更窓:UI細部は合意後24hで軽微修正のみ
まとめ:PRDは“一枚+捨てる宣言”。撤退条件が膨張を止めます。
4. 優先順位と会議運用:価値線→1SP→10分台本で“決める場”に戻す
RICEを点数合戦にすると、また機能語に戻ります。まず“価値線”(Aha→TTV→D1)に効く1SP(最小差し替え)へ割り、前後2週間で判定できる順に並べる。会議は10分台本で、結論(色)→論点3つ→Decision→変更窓→宿題の順に固定します。
要点:1) 線に乗る施策のみNow 2) 1SPに分割 3) 平均でなく中央値 4) RICEは最後の並び替え 5) Slackは毎朝“1枚”を自動投稿。
具体例:「通知強化」を“1通・直着・抑制”に限定しただけで再開TTVが短縮し、D1に波及しました。
【10分レビュー台本(コピペ可)】
結論:Aha=黄 / TTV=赤 / D1=黄(価値線=説明2行→導線1本化)
論点:1) 分岐残り 2) 用語難 3) 再開導線
決定:今週 1SP×2(説明2行/導線1本化)
変更窓:UI細部は24hで微修正OK
宿題:定性n=5を週内、次回◯/◯判定(Decision PdM)
まとめ:台本化で“決める場”を守る。速度が最大の品質保証です。
5. 初動14日プラン:診断→一枚PRD→前後比較の“3ステップ”
最短で抜けるには、まず現状診断→一枚PRD→前後比較の順で2週間回します。n=5の定性で阻害を掴み、1SPを2本だけ実装、前後2週間でAha/TTV中央値/D1の差分を撮る。数字が薄ければ代理指標で補強し、撤退条件で切り替えます。
要点:1) Day1-2 診断(症状チェック) 2) Day3 一枚PRD 3) Day4-6 実装(1SP×2) 4) Day7-13 前後比較 5) Day14 判定と次手。
具体例:“作業の山”を崩し、2本の1SPへ絞っただけで翌週に変化が可視化。以降は線上の施策だけが議論に残りました。
【14日スケジュール(コピペ可)】
D1-2:症状チェック&定性n=5
D3:一枚PRD(目的は差分文/撤退条件/変更窓)
D4-6:1SP×2(説明2行/導線1本化 など)
D7-13:前後比較(Aha/TTV中央値/D1+代理指標)
D14:判定→次手(価値線に沿ってNow/Next/Later更新)
まとめ:“診断→一枚→前後”で14日。小さく回し、線から外れない。
有料note(特典あり)
テンプレは下記にまとまっています(特典PDF2点:PdMスキルテンプレ集/キャリア戦略シート)。
FAQ
- Q. 数字が開示できない現場でも運用できますか?
- A. はい。相対差分(+◯pt/-◯%)と中央値、代理指標(トースト閲覧率/問い合わせ率)で十分に判定できます。
- Q. RICEは使わない方が良い?
- A. 使いますが“最後の並び替え専用”。一次判定は価値線(Aha→TTV→D1)で行います。
- Q. 大粒施策はどう捌く?
- A. 1SPに割れない限りLaterへ。割れたらNow/Nextに戻し、前後2週間で判定します。


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