さまざまな業種のPdMと接点を持たせていただき、この壁に悩まされている人、解決する術を身につけた人、そもそも全く気にしていない人と捉え方は多種多様ですが、少なくとも、PdMとしてスキルを上げていくためには、自分で解決していかなくてはいけないのだと思います。
日本ではPdMとしての役割や職種の定義がまだ曖昧で、どこまでの範囲をPdMが行うのかは企業によりさまざまです。ただ、どこの企業も事業益を出すことを目標にしていますので、それを無視していては、ただのぶら下がり社員と思われてしまうでしょうね
PdMにとってのOKR
PdMとしてチームをまとめる役割の人にとって、少なからずチームとしてのOKRを設定していることでしょう。OKRとは目標と主要な結果を表す指標の略称です。
- 達成目標(Objectives)
- 主要な成果(Key Results
この二つの項目から「O」達成目標に向けて、「KR」主要な成果を目指していくというものです。プロダクト観点の設定をしていると、例えば「利用率」や「登録率」に目がいくことは自然なことですし、それを増加させることは悪いことではありません。
ただ、「利用者」を増加さえることにより、事業部として目指している売上にインパクトしないのであれば、せっかくチームとして成果を出したと思っていても、会社としては評価と捉えづらいと言えるでしょう。
これが絶対というわけではありませんが、少なくともチームとして設定するKRが事業部が目指すものにインパクトする繋がりを持たせる必要があります。その設定を間違ってしまうと、チームメンバーの成果を正しく会社に伝えることができず、PdMとして周囲の信用を一気に無くしてしまうことになってしまいます。
ビジネス観点の「KR」
ビジネス上では「KR」でなく「KPI」として設定することが多いでしょう。ビジネス上というのは会社として、事業部として達成すべき指標のことになります。1番わかりやすいのは売上になると思いますが、これは企業によってさまざまあるはずです。
ここでは売上として話を進めると、会社の役員など上位のステークホルダーはPdMに何を期待しているのでしょう?
世の中にない革新的なアイデアをプロダクトにして、各種メディアに取り上げられること、会社のPRに大きく貢献できること、もちろんゼロではありませんが、多くの場合そうではありません。結果、メディアにも取り上げられることはプラス要素ですが、求められているのは企業としての成長を促す売上を増加させるプロダクトを作ることです。
ただメディアに取り上げられる、PRに大きく貢献するのなら、リリースした革新的なプロダクトを無償で提供し、広告費を莫大に使い、売上に全く繋がらないことをすれば良いだけです。周囲は「こんな素晴らしものを無償提供するなんてすごい!」「これはみんなに喜ばれる!」とどのメディアでも賞賛され続けることでしょう。
結果、数年後に会社は組織を維持することができなくなる事態に陥ることでしょう。
多くの方に取り上げられる、認知されるのは利用者が増え、売上が上がった結果の後についてくるものです。多くの上位ステークホルダーは事業収益を上げることを期待してPdM組織を見ています。ビジネス上の役割を無視してチームKRを達成することはあまり良いことではないと言えるでしょう。
PdM組織のOKRが事業インパクトに直結するとは限らない
ここで最初にお話ししたPdMチームのOKR設定を間違えてはいけないという話題に戻ります。
利用者数をKRと設定して、利用者が増えることによる増収の構造になっていなければ、その設定もそのプロダクトも事業者にとってはあまり良いものではないということです。よく行われる手法として、MVP(Minimum Viable Product)で顧客ニーズを把握するため無償リリースをして、ある程度利用者が集まったところで機能追加をして有料機能をつけることがあります。この手法でもMVPと言いながら、利用者増加を狙うあまり、無償部分にほとんどの機能をつけてしまうと、わざわざ有料機能を購入する顧客がいないかもしれません。
もしくは、無料だからよかったけど、有料なら他社の別のプロダクトの方が優れていると、優良にした瞬間に競合に顧客を取られてしまうこともあるでしょう。チームで設定するOKRは必ず事業インパクトにつながるように設定をして、それをもとにシナリオを組み立てていかなくては、リリース後、事業として期待されていたものと全く違うものになってしまう可能性もあります。
ビジネスを意識しないPdMが多くなった
多くなったというよりはPdMという職種の方が増えてきたという方が正しいかもしれません。そして、多くの方は売上に直結するKPIを自分たちのKRに設定したがらず、責任を負いたくないという考えのもの仕事をしている印象が強いです。
デジタル完結できるものであっても、売上は営業やECチームに任せ、自分たちは「顧客体験の良いプロダクトに専念する」と耳障りの良い言葉を目標にして、現実逃避しているに過ぎません。
「顧客体験が全て」それで売上が上がらないのは他のチームの責任、売上が上がれば、「顧客体験が良い」からと考えるPdMが本当に多くなったと感じます。このような方々と話していると「自分では何もできないような人間なのだろうな」と感じます。実際に誰もが知る有名企業にいるPdMですらこのような考えの方がいます。
そして、その方は一年も経たずに転職していました。
そもそもPdMの役割とは
ここまで「顧客体験」というものを否定しているような話題でしたが、PdMとして顧客体験を向上させることは重要な要素になります。ただ、顧客体験の向上が事業収益につながる体験の向上につなげることが大切です。
PdMはよくミニCEOと比喩されていますが、これはその言葉通り、事業の根幹となるプロダクトをマネージメントするのですから、どこで利用者を満足させ、どこで事業収益を上げるのか、そしてその責任を負うための設定はどのようにするのかということを明確に考えて構築していくことがPdMの役割なのだと思います。
最後に
PdMは権限はないけど責任が重いと感じる方も多いでしょう。ただ、責任とは期待の裏返しと捉え、自分が事業の根幹にいてコントロールしていくと考えれば、ものすごくやりがいがあり、どのような企業に行っても通用する人材になれるのではないでしょうか。
事業収益を増加させるプロダクトを創発していくというのは簡単なことではないでしょう。ですが、同時にとても楽しい職種なのだと私は考えて取り組んでいます。これからPdMを目指す方がいましたら、ぜひ、顧客体験と事業収益の双方を考え、構築していくPdMとなっていきましょう。
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