「toB(業務システム)のPMはロジックでなんとかなるが、toC(一般消費者向け)はセンスがないと無理だ」
プロダクトマネージャー(PdM)の界隈で、まことしやかに囁かれるこの言葉。
確かに、一般消費者は合理的ではなく「感情」や「衝動」で動くため、ロジックだけでは説明がつかないことが多々あります。
しかし、だからといってPdMが個人の「感性」や「センス」だけに頼って勝負するのはあまりに危険です。再現性がなく、チームで成果を出し続けることが難しいからです。
この記事では、不確実性の高いtoC領域で成果を出し続けるために必要な「5つの必須スキル」と、それぞれのスキルを体系的に学ぶための「推薦図書」を紹介します。
センスに頼らず、学習と実践によって獲得できる武器を揃えましょう。
1. ユーザーに価値を届ける力(Outcome志向)
機能を作ること(Output)自体を目的にしてしまい、誰も使わない機能が積み上がっていく現象を「ビルドトラップ」と呼びます。
特にtoCプロダクトは、社内からの「こんな機能があったら面白そう」「流行っているから入れよう」というジャストアイデアが出やすく、この罠に陥りやすい傾向があります。
重要なのは、「何を作ったか」ではなく「ユーザーの行動がどう変わったか(Outcome)」に焦点を合わせることです。
📕 おすすめの一冊
『プロダクトマネジメント ―ビルドトラップを避け顧客に価値を届ける』
(メリッサ・ペリ 著)
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この本は、PdMの仕事が「機能リリース」ではなく「価値創出」であることを叩き込んでくれるバイブルです。
「なぜその機能が必要なのか?」「それがユーザーのどんな課題を解決するのか?」を問い続けるための思考法が学べます。
実務での活用ポイント
本でマインドセットを学んだら、実務では「要件定義書(PRD)」で縛りをかけましょう。
私はPRDの冒頭に必ず「Context(なぜやるのか?)」と「Outcome(どうなったら成功か?)」を書く欄を設け、ここが埋まらない限り開発には着手しない運用にしています。
2. ユーザーにリーチするための力(マーケティング・SEO)
どんなに素晴らしいプロダクトを作っても、ユーザーに知られなければ存在しないのと同じです。
特にtoCでは、ユーザーが自分から検索したり、SNSで見かけたりする「発見(Discovery)」のプロセスを設計する必要があります。
WebサービスであればSEO(検索エンジン最適化)、アプリであればASO(アプリストア最適化)やSNSマーケティングの知識が不可欠です。
📕 おすすめの一冊
『沈黙のWebマーケティング —Webマーケッター ボーンの逆襲— アップデート・エディション』
(松尾 茂起 著)
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マーケティングの入門書として長く愛されている一冊です。
漫画形式でストーリーが進むため非常に読みやすいですが、内容は本格的。SEOの本質である「検索意図の理解」や、ユーザー心理に寄り添ったコンテンツ作りの極意が学べます。
実務での活用ポイント
テクニカルなSEOは専門家に任せるとしても、PdMは「ユーザーがどんなキーワード(悩み)で検索し、どういう期待を持ってLPに来るか」というユーザー心理の文脈を理解しておく必要があります。これがUI/UX設計の根幹になるからです。
3. プロダクトを支える技術を理解する力(Feasibility)
「エンジニアと会話ができない」「技術的な制約がわからず、無茶な仕様を出してしまう」
これは多くの非エンジニア出身PdMが抱える悩みです。
コードを書けるようになる必要はありませんが、システムがどう動いているのか、データの流れ(DB構造など)はどうなっているのかという「構造」を理解する力は必須です。
📕 おすすめの一冊
『Webを支える技術 ――HTTP、URI、HTML、そしてREST』
(山本 陽平 著)
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Webサービスに関わるなら避けて通れない「HTTPプロトコル」や「Webのアーキテクチャ」について体系的に学べる名著です。
少し難易度は高いですが、第1部だけでも読んでおくと、エンジニアとの共通言語が劇的に増えます。
実務での活用ポイント
エンジニアに仕様を相談する際、「これ作れますか?」と丸投げするのではなく、「こういうデータを保存したいが、今のDB構造で無理はないか?」とデータ構造の視点から会話できるようになると、信頼関係が深まります。
4. データから学習し、グロースさせる力(定量分析)
toCプロダクトの改善において、データ分析は「羅針盤」です。
ユーザー数が数万人〜数百万人に及ぶtoCでは、一人の声(N1)だけでなく、全体としての傾向を定量的に把握し、ボトルネックを特定する必要があります。
SQLを書く技術も大切ですが、それ以上に「どの指標を見るべきか(KPI設計)」という論理的思考力が問われます。
📕 おすすめの一冊
『A/Bテストの教科書』
(野口 竜司 著)
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単に「AとBどっちがいいか」を決めるだけでなく、統計的に有意な差とは何か、どうやって検証サイクルを回すかという科学的なアプローチが学べます。
または、データ分析の基礎から学びたい方には『分析力を武器にするデータ分析入門』もおすすめです。
実務での活用ポイント
私は分析で迷子にならないために、「KPIツリー」を作成しています。
KGI(売上など)を因数分解し、どの指標(先行指標)を動かせば全体が良くなるかを可視化することで、チーム全員が納得して施策を進められるようになります。
5. 「傭兵」ではなく「宣教師」になる力(ビジョン・組織論)
最後は、チームを動かす力です。
仕様書通りに動く「傭兵」のようなチームを作るのではなく、プロダクトのビジョンに共感し、自律的に動く「宣教師」のようなチームを作れるか。
これが、toCプロダクトが熱量を持ってユーザーに届くかどうかの分かれ道です。
📕 おすすめの一冊
『INSPIRED 熱狂させる製品を生み出すプロダクトマネジメント』
(マーティ・ケガン 著)
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シリコンバレーのトップ企業が実践しているプロダクト開発の文化や組織論が網羅されています。
「機能要件」を渡すのではなく、「解決すべき課題」を渡してチームに解かせる。このスタンスは、現代のPdMにとって最も重要なマインドセットと言えるでしょう。
まとめ:理論を「実務の型」に変えよう
今回紹介した5冊は、いずれもプロダクトマネジメントの「本質」を突いた名著です。
しかし、本を読んで「いいこと聞いたな」で終わらせてしまっては、明日の現場は変わりません。
重要なのは、その理論を「明日使える道具(テンプレート)」に落とし込むことです。
- 『ビルドトラップ』で学んだら、PRDのフォーマットを変える。
- データ分析を学んだら、KPIツリーを作ってみる。
- 『INSPIRED』を読んだら、チームへのタスクの渡し方を変える。
知識を「行動」と「型」に変えて初めて、成果が生まれます。
まずは気になる一冊を手に取り、そのエッセンスを一つでも現場に取り入れてみてください。
▼ toC PdMの実務で使えるテンプレート集はこちら(note)







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