結論:PRDの各章は“無駄な装飾”ではなく、意思決定の衝突を減らすための必須部品です。
「PRDにこんなに項目が要るの?」と若手に聞かれることがあります。私自身、最初は疑いました。けれど“目的”を外すと誰も同じ方向を向かず、“指標”を抜くと改善できず、“スコープ”を曖昧にすると炎上し、“リスク”を飛ばすと一番痛いところでつまずく。つまり各章は、失敗の再演を防ぐストッパーなのです。この記事では、4つの主要章「目的」「成功指標」「スコープ」「リスクと検証」を物語と具体例で掘り下げます。
目的:なぜやるのかを一文で固定する
PRDの冒頭に「目的」があるのは偶然ではありません。なぜなら、課題認識が揺らぐと会話が永遠に終わらないからです。
- 「誰のどんな課題を解くのか」を一文で書く
- 事業価値との接続(収益・コスト・戦略)を添える
- 書き方は“課題→対象→事業目的”の順
例:
対象は「法人管理者」/課題は「初回登録に時間がかかり離脱」/事業目的は「有料契約率の向上」。——これを一行で書くと、全員の方向が揃います。
物語:あるプロジェクトで「目的」が無かったとき、営業は受注率改善、CSは問い合わせ減少、開発は性能改善を主張。三者三様で議論がループしました。目的を一行置いた途端、対話は止まり、計画は動き出しました。
成功指標:Aha・TTV・D1を測るために必須
指標を置かないと「やった気」だけが積み上がり、学習が進みません。特にAha・TTV(p50/p95)・D1はセットで置くべきです。
- Aha:ユーザーが価値を実感する瞬間(例:初回のチーム作成完了)
- TTV:その瞬間までの時間。中央値(p50)と遅い層(p95)の両方を見る
- D1:翌日も自発的に戻ってきたか
例:Aha=「チーム作成完了」、TTV p50=3分/p95=7分、D1=40%。この数値を置くだけで、計測と学習の起点が明確になります。
Aha→TTV→翌日活性の順で見ると意思決定が速くなります。詳しくはKPI設計と運用ガイドへ。
スコープ:Must/Should/Won’tで衝突を減らす
スコープを曖昧にすると、必ず膨張します。「これも必要では?」という善意が追加され、リリースは遅れ、品質は下がります。だからPRDでは必ずMust/Should/Won’tで分けます。
- Must:今回必須(例:2ステップ登録)
- Should:できればやりたい(例:住所自動補完)
- Won’t:今回はやらない(例:SSO対応)
物語:ある案件ではMust/Should/Won’tが無く、リリース直前に「外部連携も欲しい」と追加。工数は倍増し、納期は崩壊。次回からPRDにWon’tを明記した結果、会議は穏やかになりました。
リスクと検証:最も痛い失敗を先に潰す
PRDがただの希望リストで終わらないために、必ず「リスクと検証」を書きます。ここを飛ばすと、最悪のタイミングで最悪の問題にぶつかります。
- 技術リスク:実装が想定以上に複雑(例:既存テーブルとの整合)
- ユーザーリスク:期待した行動が実際に起きない
- オペレーションリスク:CS負担が急増
- 検証方法:技術はPoC、ユーザーはインタビュー、オペレーションは業務シミュレーション
例:最初に「ユーザーが本当に初回登録を最後まで完了するか」を検証対象に置いた。リリース前にβテストで70%が途中離脱すると判明。ここで軌道修正できたことで、大事故を防げました。
まとめ:各章は失敗を防ぐストッパー
目的は方向を、指標は学習を、スコープは範囲を、リスクは安全装置を担います。どれか1つを抜くと、必ず失敗が再現される。PRDの各章は“余計”ではなく、経験則から削り出された必然なのです。
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FAQ
- Q. PRDは詳細まで埋めないと意味がない?
- A. いいえ。まずは骨格で十分。詳細は学習の過程で追記します。
- Q. スコープの線引きは誰が決める?
- A. PdMが案を出し、チームで合意形成。透明性を担保することが大切です。
- Q. リスクはどのくらい書けばいい?
- A. 「最も痛い失敗」1〜2点で十分。それ以上は分散して本質を見失います。
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