チームでAhaを作る方法|PdM・CS・開発が“同じ瞬間”を共有するナレッジ構築法
Ahaは個人の発見ではなく、チームの合意です。
PdMがどれだけ「ここが価値だ」と定義しても、CSや開発が同じイメージを持っていなければ、体験は分断されます。本記事では、チームでAhaを共有・更新していくための仕組みを、実例ベースで解説します。
1. なぜAhaは“個人戦”になりがちなのか
多くのPdMチームで起こる問題は、Ahaが「資料の中だけ」で存在してしまうことです。
PdMだけが定義し、チームはその言葉を「共有ファイルの中」で一度見ただけ。すると開発は機能単位で動き、CSはサポート文面を独自に書き、顧客体験がばらつきます。
“Ahaのズレ”はリテンション低下の始まりです。
だからこそ、Ahaはドキュメントではなく、チーム全員で議論して決める“共通体験”にする必要があります。
2. Ahaをチームで共有する3ステップ
Ahaを組織的に運用するための基本ステップは次の通りです。
① AhaボードをMiroで可視化
まずは、チーム全員が触れるMiroボードを用意します。Ahaは文章ではなく、「体験の流れ+感情の変化」で描くのがポイントです。
例:Miroボード構成 -------------------- 左:現状体験(Before)→ 中央:Aha体験(After)→ 右:次の価値(Loop) ステッカー色:青=機能/黄=感情/ピンク=課題メモ
このボードを週1で見直すだけでも、CSが現場からの声を追記し、開発が摩擦ポイントを修正できます。
② Slackテンプレで共有・更新
Miroで決めたAhaをSlack上でも共有し、日常的に議論できるようにします。以下は実際に使えるSlackテンプレートです。
#aha共有(テンプレ) --- 今週のAha体験: → 「請求書の自動仕訳が目で分かる」 現場からの声: → 「使ってみたけど、例外処理が怖くて放置されがち」 次週アクション: → 「初回体験時に例外を1件だけ見せる」
惹きつけの視点: PdMが毎回スレッドを立てなくても、CSや開発が自発的に書き込めるようにするのが理想です。
③ 定例の“体験レビュー”を設ける
週次のKPI報告会とは別に、「体験レビュー」を30分だけ設けます。
この場では数字を見ず、「体験の摩擦がどこで起きているか」だけを話す。
Ahaがどんな条件で再現されるかを言語化し、次の実験テーマを決めます。
例:体験レビューの会話 CS「“自動化”より“安心”の方が反応が良い」 開発「じゃあログ画面を先に出そう」 PdM「Aha定義を“翌月も自動化される安心感”に再設定しよう」
このようにAhaを動かす意思決定が全員で行われると、チームが一枚岩になります。
このときPdMがチームを導くために行ったこと
Aha共有の仕組みを作っても、最初のうちはうまく回りません。
PdM自身が“旗を立てる”役割を担わなければ、誰も自分ごととして動けないのです。
ここでは実際にPdMがチームを導くために行ったアクションを紹介します。
1. まずは「自分が一番わかっていない」と公言する
最初のチーム定例で、PdMはこう言いました。
「正直、ユーザーがどの瞬間に“これは良い”と感じているのか、自分でもまだ分かっていない。だから一緒に見つけたい。」
この一言で、開発もCSも“意見を言っていい空気”に変わりました。
PdMが完璧を装うと、チームは沈黙します。逆に“不確実性を共有する姿勢”が信頼を生みます。
2. 現場メンバーの仮説を全て可視化する
CSが感じた違和感、開発が気づいた摩擦、マーケが拾った声──すべてをMiroに貼りました。
PdMは「良し悪し」を判断せず、**仮説を並べる“土台”**を作ることに集中しました。
このときのルールはたった1つです。
- 否定をしない。「なぜそう感じたか」を掘り下げる。
- 意見をラベル化(例:「行動」「感情」「導線」)して可視化。
- 週1回、仮説を整理して“共通の言葉”に置き換える。
結果、Ahaの定義が「自動化ができた瞬間」から「翌月も安心して自動化できる実感」へと再定義されました。
3. Ahaを「議論の中心」に置く
リリース前の会議やロードマップ策定では、PdMが必ずこう言いました。
「この機能はAhaを強くするか? それとも遠ざけるか?」
この問いを合言葉にすることで、チームの思考が“数値軸”から“価値軸”へ切り替わりました。
CSは「お客様が“安心した”と言っていた」と報告し、開発は「実装負荷はあるがAhaに直結する」と判断するようになったのです。
4. 小さな成功を全員で称える
SlackでAhaが改善された報告が上がったとき、PdMは必ずリアクションをつけてコメントを返しました。
「Aha +2.5pt! CSチームの文面改善が響きましたね。開発チームのサポートもナイスです。」
この“称える文化”がチームの士気を高め、Ahaを中心にした学習ループが自然に回り始めました。
5. Ahaレビューを継続的に運用する
1回の会議で終わらせず、PdMが定例のファシリを続けたことが鍵でした。
ファシリは単に進行するのではなく、**「学びを整理するナレーター」**として存在すること。
それにより、チーム内の暗黙知がドキュメント化され、“属人Aha”が“チームAha”へ進化していきます。
惹きつけの視点: PdMがすべての答えを出す必要はありません。
チームがAhaを語り、磨き、更新していく“場”を作ることがPdMの本当のリーダーシップです。
3. Aha共有がもたらす副次効果
Ahaをナレッジとして蓄積すると、以下のような効果が現れます。
- 新人オンボーディングが短縮: チーム全体の“価値観の共有速度”が上がる。
- CSの発信が強くなる: 体験ベースで提案できるようになり、プロダクト理解が深まる。
- リリース判断が早くなる: “価値に直結しているか”で判断ができるようになる。
4. チームAha設計チェックリスト
- Ahaは「誰の・どの瞬間・どんな感情」まで定義されているか?
- そのAhaが、チーム全員に共有されているか?
- Slackで“今週のAha体験”を投稿する文化があるか?
- 数字の報告だけでなく、“体験レビュー”の時間があるか?
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