良いプロダクトは「正しい答え」からではなく、「刺さる問い」から始まります。声より行動、アンケートより観察。toCで価値をつくるなら、潜在課題を言語化するための“問いの設計”が要です。私は現場で、問いを一段深くするだけでA/Bの当たり率が跳ね上がるのを何度も見てきました。本稿は、INSPIREDの思想を土台に、問いのつくり方をtoC実務に落とし込むものです。
問いが浅いチームは必ず迷走する
toCではエゴに近い仮説でも一瞬は数字が動きます。しかし定着しません。理由は簡単で、問いが“表層の不満”に留まり、行動の駆動因(回避動機・文脈・代替)に届いていないからです。
私もよくメンバーの企画レビューで「課題が浅い」と伝えています。「面倒だからやらなかった」というのは課題ではありません。「面倒」という部分を分解していく必要があり、さらに、その分解した先の課題を解決するソリューションがビジネスに紐づいている必要があります。
- 表層の問い:「なぜ離脱するのか?」
- 有効な問い:「どの状況で、何を避けるために、どの代替に逃げたのか?」
- 意思決定に効く問い:「その摩擦を何秒・何タップ短縮すれば“続ける”のか?」
課題の分解の基本は、こちらのフレームが役立ちます(参考:課題解決型PdM)。
潜在課題を見つける“観察の焦点”
潜在課題は声では出てきません。行動の“躊躇・巻き戻し・先送り”に現れます。私は観察時に、時間(秒)、操作(タップ/スクロール)、視線(迷い)を必ず記録します。toCでは特に「初回成功(Aha)」までの摩擦を秒単位で拾うのが効きます。
- 回避動機:恥・手間・遅延・失敗責任・通知負荷
- 代替行動:スクショ保存/メモアプリ/後でやる/ブラウザに逃げる
- 文脈:利用シーン(移動中/就寝前)、同時実行(音楽/SNS)、物理制約(片手)
初回体験の短縮は、こちらが詳しいです(関連:オンボーディング設計とTTV短縮)。
問いの設計フレーム:5W1B(When/Who/Why/What/How/Barrier)
私は“良い問い”をこの順で作ります。ポイントはWhyから入らないこと。行動は状況依存です。まずWhen/Whoで対象を狭め、Barrierで摩擦を特定し、最後にHowで介入方法を問うと、打ち手が自然に出ます。
定量調査では仮説を明確に立て、それが正しいのかをさらに調査していく必要があります。
- When(状況):いつ・どの場面で起きる行動か
- Who(対象):習慣/非習慣、新規/既存、ライト/ヘビー
- Why(動機):得たいもの/避けたいもの
- What(行動):どの行動を変えたいか(一次指標)
- How(介入):何を足す/削る/順序を変えるか
- Barrier(摩擦):何がブレーキか(秒/タップ/理解)
このフレームで作った問いは、KPIへの接続が速くなります(参考:KPI設計と価値ループの可視化)。
toC具体例:習慣化アプリの“続かない問題”を問いで解く
仮の事例です。ヘルスケア習慣化アプリで「続かない」相談。多くのチームは通知強化やインセンティブを足しますが、それでは継続したパフォーマンスを得ることはできません。
「寝る前の5分で、なぜ“明日でいいや”となってしまうのか?」
ここを分解していくと、「面倒」「すぐ寝たいから」「だって入力枠が多い」これで、ただ入力項目が多いだけではなく、項目を小分けにしていることが問題とわかります。事業として取得したいデータもあるため、極力情報は取得したいものです。
そのため、項目を減らすではなく、まとめるという解決策で、ユーザーの継続率を上げ、さらには情報の取得を維持できます。
- When/Who:就寝前/ライトユーザー、新規3日以内
- Barrier:入力3項目の必須化+専門用語の理解負荷
- What(一次指標):初回セッション内の“1タスク完了率”
- How:最初の3日は1タップ完了+仮データ同梱+用語を日常語に置換
これだけで初回完了率が上がり、D1継続とAha到達が追随。A/Bは「文言→フロー→機能」の順で軽く回すのがセオリーです(関連:ユーザーインタビュー完全ガイド)。
問いは“一次指標と撤退線”まで落とす
良い問いは、測れる形に落ちます。私は必ず、問い→一次指標→撤退線の順で握ります。撤退線があると、A/Bが長引きません。負けを素早く認め、仮説を更新できます。
- 一次指標:初回セッションのコア機能到達率、初日完了率、N秒以内の完了比
- 撤退線:CVR-10%が2週で黄、-15%で赤(打ち手停止→問いから再構築)
- 会議運用:数字読みは事前共有、会議は“ズレ直し”に集中
指標設計と可視化の運用は、こちらをベースに(参考:KPI設計と価値ループの可視化)。
“問いの設計シート”でチームの言語を揃える
問いは個人技に見えますが、型に落とせます。私は1枚のシートで「問い→観察証拠(定性/定量)→一次指標→打ち手→撤退線」を並べ、週次で更新します。全員が同じ順序で考えるだけで、議論は静かに速くなります。
- 統合ログ:スクショ・録画・発言メモを1ページ集約
- 問いの型:5W1Bを強制入力(空欄を残さない)
- レビュー:週次で「問い→学び→決定」を更新、黄赤の2段しきい値
問いの設計をショートカットしたい方へ
一次指標テンプレ、撤退線ルーブリック、レビュー議事テンプレをまとめています。toCの現場でそのまま使えます。
まとめ:答えより、問いで動かす
toCの価値創造は、“良い答え”探しでは前に進みません。状況と動機から摩擦を特定し、行動を変える問いを立て、一次指標と撤退線で意思決定を締める。これが再現性のある前進です。明日からできる最小セットは、次の3つです。
- 5W1Bで問いを作る(When/Whoを最初に固定)
- 観察ログ+ログ指標を1枚に統合(迷いの証拠を残す)
- 一次指標と撤退線を握り、会議は“ズレ直し”に集中
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