INSPIRED 実践07|検証から仕様へ──PRD設計の型
検証で学びが出ても、仕様に落ちずに終わってしまう。多くのチームが直面するこの分断は、「PRDをどう設計するか」で一気に解消できます。本稿では、価値仮説(PIH)と検証(4C)の結果を、AhaとTTVに接続したPRDへ変換する実務フローを公開します。
BizとDevが衝突し、意思決定が止まった日
ビジネス側と開発側の意見がすれ違うということはどんな組織でも発生すると思います。
例えば、「四半期の数字に間に合わせたい」と主張するビジネス側、「仕様の根拠が弱い」と作る意味を求め開発を進めない開発側。そんな時は議論を止めて、検証結果とユーザー行動ログを再掲して、改めて今回の企画の目的を整理します。
「Ahaにたどり着く前の離脱が52%。TTVに直結するオンボードの詰まりです。だから仕様は“この行動を変えるための設計”に限定します」そう伝えると、部屋の空気が落ち着きました。するとそれ以降の議論は早く、静かで、建設的になります。PRDは“合意のための文章”ではなく、“判断の結果”で作る──その原則を再確認するのです。
本記事では、検証の学びを「判断→仕様(PRD)」へ翻訳する具体ステップを提示します。価値提供型PdMとして、Aha到達・TTV短縮に直結するPRDを一緒に作っていきます。
RDは“議論のメモ”ではなく“判断の記録”です
多くのPRDが形骸化する理由は、過去の会話や要望の寄せ集めになっているからです。PRDは「誰が何を言ったか」ではなく、「何を根拠にどう決めたか」を記録するドキュメントです。根拠はPIHと検証(4C)、目的はAha到達とTTV短縮、そして事業KPIへの接続にあります。
- 接続性:PIH・検証・KPI(Aha/TTV)と往復可能であること。
- 判断性:結論に至った決定理由(反証条件含む)が残っていること。
- 実行性:仕様→設計→実装→計測までのラインが1枚で追えること。
検証→PRD変換フロー「LDS」:Learning / Decision / Spec
検証結果は、そのままでは抽象的で開発に渡せません。PdMは次の3段階で、検証結果をきちんと仕様に落とし込む必要があります。議論ではなく意思決定に接続するための最小構成です。
事実・行動・構造。例:価格入力直前の不安で離脱52%。
優先方針。例:参考価格UIの導入で不安を先回りする。
UI/処理/エッジケース/計測。例:推定価格表示・説明文・AB判定。
この3点がワンセットになっていれば、PRDは自然に“実行可能な仕様”になります。重要なのは、Decisionに「Go/Pivot/No-Go」の判断条件(反証条件)を残すことです。
【テンプレ公開】PRDセクションの標準構成
以下は、AhaとTTVを起点にしたPRDの最小テンプレートです。SlackやNotionにそのまま貼り付けて使えます。過不足はプロダクト特性に合わせて調整してください。
# Product Requirements Doc(PRD) — INSPIRED標準 1. Context(背景・目的) - 価値仮説(PIH):Problem / Insight / Hypothesis - Aha仮説:ユーザーが価値を実感する瞬間の定義 - TTV:Aha到達までの所要時間(現状/目標) 2. Learning(検証からの学び) - 事実(行動・データ): - 合意した論点: - 成功/反証条件の結果: 3. Decision(判断) - 採用方針(Go / Pivot / No-Go): - 代替案の比較理由: - リスクと前提(可逆/不可逆): 4. Spec(仕様) - ユースケース(主要シナリオ): - UI/UX要件(ラベル、文言、エラー状態含む): - 機能要件(権限、制約、例外): - 非機能要件(性能、可用性、セキュリティ): 5. Measurement(計測) - 主要指標:Aha到達率 / TTV / 完了率 / 継続率 - 実装イベント:命名、発火条件、属性 - A/B設計:判定基準、期間、母数 6. Rollout(展開) - リリーススコープと段階: - ガードレール(シャットオフ条件): - サポート計画(CS・FAQ・告知): 7. Ownership(責任) - DRI:PdM / Eng / Design / QA / Biz - レビュー:#04_review(Slack)日時 8. Appendix - ワイヤ・仕様図・参考資料
検証→PRD→実装を“1本の線”でつなげたい方へ
本記事のテンプレ群は、要件定義・OKR・TTV設計まで接続して初めて真価を発揮します。現場導入向けに、ドキュメント完全版と運用手順をまとめています。
誤作動しないPRD──“会話ログ化”を防ぐチェックリスト
PRDが抽象的で、単に会話の書き起こしになった瞬間、開発は何をして良いのか、やるべきなのかがわからなくなります。以下のチェックで、PRDを常に「判断の記録」に保ちます。
| チェック項目 | 具体例 |
|---|---|
| 根拠が検証に紐づく | 「離脱52%(n=2.1k)」「インサイト:相場不安」。出典を記載。 |
| Aha/TTVが記述される | Aha=見積完了、TTV=初回起動→見積完了の中央値。 |
| 反証条件がある | 「ABで完了率+15%未満なら撤回」。 |
| ガードレールがある | 問い合わせ増×20%でロールバック。 |
| 責任が明確 | DRI表に名前とSlackハンドルを記載。 |
| 計測が具体 | イベント名、発火条件、属性、ダッシュボードURL。 |
Slack運用:PRDは“検証レビューの延長”で管理します
仕様は静的に書いて終わりではなく、検証レビューの延長で運用します。チャンネルとスレッドの分離により、検証→判断→PRD更新→実装が流れ続けます。
#01_hypothesis … PIH共有 #02_validation … 検証設計(4C) #03_mvp … MVP実装 #04_review … 検証レビュー(判断ログ) #05_prd … PRDの最新版・差分・計測更新
更新は「差分だけ」を投下します。全体の再配布ではなく、意思決定の変更点と理由を残すことが大切です。これは良いも悪いも数値で表、全員で改善に進めるための共有です。
【PRD Diff】 ・変更点: ・根拠(Learning): ・判断(Decision): ・影響範囲/ガードレール: ・担当/期限:
UI文言・入力設計は“AhaとTTVに効く一文”から作ります
PRDでもっとも成果に直結するのは、実は「文言と入力設計」です。Ahaの手前で迷いを作らない。TTVを1クリックでも縮める。この視点で一文を設計します。
- 専門用語を多用し、補助説明がない。
- 初回に不要な個人情報を求める。
- ラベルとプレースホルダーが矛盾。
- 不安の核心に先回り(例:参考価格の即時提示)。
- 初回は最小入力。後続で段階的に深掘り。
- 行動を促すラベル(例:「今すぐ見積もりを確認」)。
ケーススタディ:検証→PRD→実装→AB 判定まで
オンボーディングの詰まりを解消したケースです。PRDのどこに何を書くかがわかるよう、LDSで展開します。
初回見積の直前で離脱52%。自由入力の不安が主要因(インタビューn=12)。
Decision
自動推定の参考価格UIを追加し、入力前の不安を解消する。
- 推定式:住所×面積×築年×周辺係数
- UI:推定価格+説明テキスト(誤解防止の注記)
- AB:完了率 +15% を採択基準、問い合わせ増 +20% で停止
- 計測:aha_reach、ttv_minutes、step2_drop
PRDは「検証の出口」であり「実装の入口」です
PRDが強いチームは、検証と開発の分断がありません。PIH→4C→LDS→PRD→AB→学習という線で運用し、AhaとTTVで成果を測ります。PRDを“判断の記録”として再設計すれば、合意形成は速く、実装は迷わず、学習は循環します。
検証から仕様へ──事業が前に進むPRDを一緒に作りましょう
本記事のテンプレを、要件定義・OKR・TTV・ダッシュボード設計まで一貫で回すための資料をまとめています。現場導入に必要なドキュメント一式を揃えたい方は下記をご覧ください。
アウトプットの型を素早く整えたい方向け:
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FAQ
Q. PRDの“分量”はどのくらいが適切ですか?
A. 「判断が復元できる最小量」です。LDS(Learning/Decision/Spec)と計測・ガードレールが書けていれば十分です。長文より更新頻度を優先します。
Q. BizとDevの衝突をどう解消しますか?
A. AhaとTTVで共通指標を持ち、検証の反証条件をPRDに残すことです。感覚論ではなく、学習に基づく判断として収束します。
Q. PRD更新の負荷が高いです。
A. Slackに「PRD Diff」テンプレを用意し、差分だけ配信します。最新版は#05_prdのピン留めで一元化してください。



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