はじめに:年収は“運”ではなく、設計で上げる
面談で必ず聞かれます。「この経験で、年収はどのくらい狙えますか?」――正直に言います。上げられます。ただし、評価者の文脈で語れた時だけ。私は採用側とマネージャー側の両方を経験してきましたが、最終的に見ているのは肩書きではなく、価値の再現性と影響範囲です。この記事では、2025年の相場レンジから、四半期で上げ幅を作る方法、転職・社内それぞれの交渉テンプレまで、今日から使える形で渡します。
2025年の相場レンジ:事業会社とSaaSで何が違うか
ざっくり感覚値を出します。地域・規模・資本で上下しますが、“責任の幅”と“再現性の証拠”でレンジは決まります。
- ジュニア(補佐〜小機能オーナー):450〜700万円/SaaSは+αのストック型報酬が出やすい
- ミドル(領域オーナー):700〜1,000万円/PLへの寄与を言語化できるかで差
- シニア(複数プロダクト/グロース責任):1,000〜1,400万円/再現手順と育成実績
- Head of Product/VP:1,200〜2,000万円+RSU/ストックオプション
注意点はひとつ。“年収表記は総合パッケージ”です。基本給・業績連動・RSU・SO・リモート手当までスコアカードで分解して比較してください(後述のテンプレを使えば迷いません)。
年収を決める5変数:ここを動かせばレンジが跳ねる
面接官が暗黙にチェックしている軸はだいたい決まっています。私はスコアリングをこう置き換えます。
- 事業フェーズ×影響範囲:0→1/1→10/10→100。どのスケールで何を変えたか。
- 先行指標の改善実績:Aha/TTV/翌日活性。差分の“写真”があるか。
- 再現手順の言語化:判断ログ→3クリック体験→一枚紙。誰でも回せる型にしたか。
- 希少スキルの束:軽量定性の設計、ナッジ文面、ユースケース設計、B2B2Cの合意形成。
- 推薦/評判:現職の上長・他職種からのレファレンス。周囲が語る成果が一番強い。
上の5つは作れます。課題発見で触れた通り、軽量定性×3クリック体験×一枚紙の三点セットを四半期で回せば、数字は動き、語れる材料が揃います。
レベル別:どこでつまずき、どう抜けるか
ジュニア:タスク請負から“賭けの設計者”へ
「仕様書通りに作る」から抜け出せないと、レンジは伸びません。小さな賭けを自分で設計して、先行指標を動かします。やり方はシンプル。15分×5人のインタビュー→DECIDE-LOG一行→3クリックAhaの仮説検証。これでAha/TTVの差分が撮れます。
ミドル:領域横断の“合意形成”で差がつく
指標を動かしても、広げられなければ評価は頭打ちです。一枚紙(背景/賭け/変化/学び)で合意形成の型を回し、隣の領域へ移植。価値提供型の設計図で提供価値→体験→習慣化までを一本に繋ぐと、レンジが一段上がります。
シニア〜HoP:採用と育成が“2倍効く実績”になる
自分で動かすだけでなく、チームを動かす再現手順が評価の焦点になります。判断ログの文化化、定性の定点観測、ナッジ文面のガイド。育成の成果を数字で出せれば、報酬テーブルが変わります。
四半期で“上げ幅”を作るプレイブック(社内でも転職でも使える)
- Week1:インサイト収集(15分×5人×2セット)
状況/動機/障壁/トリガーでカード化し、最頻の摩擦を特定。 - Week2:賭けを決める(DECIDE-LOG 一行)
「誰の何を、なぜ今、何で測る、やらない、次の賭け」だけ。 - Week3:3クリックAha(ノーコードでOK)
分岐を削り、ナッジ文面は「次の一歩」一本に。 - Week4:差分を撮る(nと期間を固定)
Aha・TTV・翌日活性の差分を“写真”として保存。 - アウトプット:実績一枚紙+短いピッチ(60秒×3本)
この一枚紙を持って、評価面談や転職面接に入ります。課題解決型の手順と併用すると、足元KPIと中長期価値の両輪が語れます。
転職の交渉テンプレ:メール1通と面接1回答で変わる
レンジ確認の初回メール(抜粋)
ご提示の募集レンジ(◯◯万〜◯◯万)承知しました。 直近の実績(Aha +9.8pt/TTV -34%/翌日活性 +3.2pt)と 領域オーナーとしての責務から、◯◯万〜◯◯万のテーブルを希望します。 判断ログ→3クリック体験→一枚紙で再現手順は明確です。面談で共有します。
面接での“1分ピッチ”
背景:初回導線の離脱が最多。摩擦は選択肢過多。 賭け:分岐削減+ナッジ文面の一本化。Aha/TTVで測る。 変化:Aha +9.8pt、TTV -34%、翌日活性 +3.2pt(n=1,240/3日)。 学び:分岐は迷いを増やす。次はオンボードの合意形成に拡張。
最後に「移植できる」ことだけ伝えてください。年収レンジは、再現性で跳ねます。
社内で上げる:評価を“言語化”してから動く
人事制度は動かせませんが、評価の材料は作れます。
- グレード定義と職責の“文言”に、自分の実績をひも付けて提出
- 四半期ごとの一枚紙を時系列で提出(差分の推移を見せる)
- 横展開の件数(移植数)を実績としてカウント
評価者は「比較」で判断します。時間軸と移植数を可視化した瞬間、話が早くなります。
副業・兼業:週1で“価値を届ける”設計
年収の第二エンジンとしての副業は、就業規則・NDA・稼働明確化を先に片付けます。価格は「調査→賭け→差分→一枚紙」でパッケージに。KPIはクライアントのAha/TTV/翌日活性。成果物は常に“数字の写真”です。
よくある質問(抜粋)
- Q. 未経験でもレンジは上がりますか?
- A. 上がります。未経験から14日で実績を作るロードマップと同じ手順で、先行指標の差分と一枚紙があれば十分です。
- Q. 数字が動かない時は?
- A. 「説明を増やす」ではなく、「迷いを削る」。分岐を減らし、3クリックでAhaに届く体験へ。
比較スコアカード(コピペでどうぞ)
基本給:__/ボーナス:__/RSU:__/SO:__/手当:__ リモート・勤務形態:__/裁量範囲:__/採用・育成責任:__ 先行指標の期待:__(Aha/TTV/翌日活性)/評価周期:__ 合意形成の文化:__/プロダクトフェーズ:__ 総合点(5段階):__ 備考:__
関連(内部リンク)
- 課題発見|ジュニアPdMが最初に越える壁を“型”で乗り越える
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おわりに:数字は武器、言葉は鞘
年収は“運”ではありません。数字(差分)という武器を、言葉(再現手順)という鞘に収めて持ち歩く。それだけでテーブルは一段上がります。四半期あれば十分。次の面談までに、あなたの一枚紙を増やしましょう。


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