新人PdMへのフィードバックが刺さらない理由と、響かせる伝え方
「伝えたのに動かない」──それは言葉の問題ではなく、“文脈”の問題です。
新人PdMとの1on1やレビューの場で、マネージャーが最も苦戦するのが「伝わらない」瞬間。悪気はなくても、受け手が防御的になったり、表面的に「はい」と返して実際は動かないケースが多い。ここで必要なのは“指摘”ではなく“響く設計”です。
1. フィードバックが刺さらないのは、意図が届いていないから
多くのマネージャーは「行動を変えさせる」ことに意識を置きすぎています。しかし新人PdMにとって、まだその行動の意味=“なぜ”が見えていない段階で指摘を受けても、それは単なる上位者からの命令にしか聞こえません。
たとえばレビュー中にこんな会話が起きます。
マネージャー:「この機能、KPIインパクトの根拠が弱いね」
新人PdM:「はい、次回はもう少し数値を足します」
マネージャー(心の声):「いや、根拠が薄いっていうのは“なぜその施策をやるか”の話なんだけど…」
このすれ違いの根本は「指摘の文脈が共有されていない」こと。
“なぜそう感じたのか”を言語化しなければ、相手は自分のどこを直せばいいか理解できません。
実例①:Slackで伝え方を変えたら行動が変わった
Before 「仕様書を出す前にKPIインパクトの裏付けも書いてね。」 After 「今回の提案いいね。もしKPIインパクトを数字で添えたら、ステークホルダーが“やる理由”を一瞬で理解できると思う。レビューを早く通すコツだよ。」
同じ内容でも、“相手にとっての意味”を添えるだけで、行動率は大きく変わります。
2. 伝える前に“受け取れる状態”をつくる
新人PdMは、まだフィードバックを「人格への否定」と混同して受け取ることがあります。これは本人の課題ではなく、受け止めの準備が整っていない状態。
マネージャーの役割は、言葉を投げる前に「安全な場」を整えることです。
実例②:1on1での関係構築
ある新人PdMに対して、私は最初の1on1を「振り返り」ではなく「雑談」から始めました。
最初の30分は、業務の話を一切しません。週末に何をしていたか、チームの空気をどう感じているか、彼/彼女の価値観を知るための時間です。
この“雑談”を3回続けた後、初めてフィードバックを入れたとき、彼はこう言いました。
「前回の話、実はけっこう考えてました。指摘というより“自分を見てくれてる”感じがしたんです。」
信頼関係があると、指摘が刺さらなくても、“受け取ろう”という姿勢が生まれます。
3. 響くフィードバックは“行動と感情”の両輪で構成する
行動指摘だけだと動かず、感情だけだと曖昧になる。
響くフィードバックには、「行動 × 感情 × 意図」の三層構造が必要です。
Slack文面テンプレ(響く3層構造)
「今日のユーザーインタビュー設計、すごくよかった。 (感情)仮説が整理されていて伝わりやすかったし、 (行動)ただ“聞く順番”を変えると、もっとAhaを引き出せそう。 (意図)今の段階でそこまで気づけるのはかなり強みだよ。」
“強み→改善→期待”の順に構成すると、相手が「次やってみよう」と思える温度になります。
4. 放任ではなく“任せて支える”
マネージャーの目的は、正しさを教えることではなく、考える力を引き出すこと。
新人PdMには、答えを教えるより「問いを一緒に立てる」ほうが成長を促します。
たとえばこんな問いを投げてみてください。
- 「そのKPI、なぜその指標を選んだの?」
- 「別のパターンを想定すると、どんな結果になりそう?」
- 「ステークホルダーが同じ判断をするために、何を見せればいいと思う?」
“問い”は指摘の代わりに使える最高の育成ツールです。
実例③:沈黙の1on1で生まれた自走
ある新人PdMが、施策レビューで詰まっていたとき、私はあえて答えを出さずに1分沈黙しました。
沈黙が続いた後、彼はこう言いました。
「ユーザーが使わない理由を“説明”しようとしてましたね。数字を見てるけど、体験を見てませんでした。」
その瞬間から、彼のSlackには「自分で立てた仮説」が増えていきました。
マネージャーが答えを出さないことで、メンバーは“自分で考える責任”を持ち始めます。
5. フィードバック後の“再起動設計”が鍵
フィードバックは一度きりでは終わりません。
大切なのは“伝えた後”──その言葉がどのように定着していくかを設計することです。
例えば私は、1on1の最後にこの一言を必ず入れます。
「じゃあ、次のMTGでその“気づき”を10分だけ聞かせて。」 (※次の場を約束することで、考えの余熱を保つ)
すると、メンバーは次の週に自分の気づきをスライド1枚にまとめて持ってきます。
そのサイクルが“考える習慣”になります。
6. 振り返りシートテンプレ(コピペ用)
【1】今日の気づき: 【2】行動に移すとしたら: 【3】やってみて得られたこと: 【4】次に挑戦したいこと:
たったこれだけでも、言われて終わりではなく「自分の成長ストーリー」に変わります。
まとめ:響くフィードバックは、信頼と設計の上に立つ
新人PdMは“できない”のではなく、“理解していない”だけ。
そのギャップを埋めるのが、マネージャーの言葉設計です。
刺さらない=伝え方が悪いのではなく、準備が足りない。
環境・関係・構造を整えれば、フィードバックは確実に「成長のスイッチ」になります。
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本記事で紹介した「響く伝え方」を、実際の1on1台本とSlack例文で解説した記事を公開しています。
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