自律するPdMメンバーを育てる|“良質な問い”で視座を上げるマネジメント実務
結論:自律は「任せる」から生まれず、「視座が上がる問い×安全に試せる場」から生まれます。
「次これやっておいて」が習慣になると、メンバーは“正解待ち”になります。いっぽう、問いを渡すと「なぜそれをやるのか/その先に誰がどう楽になるか」を自分の言葉で考え始めます。ここで初めて仕事が“自分ごと”に変わり、判断や提案が自走します。
Aha→TTV→翌日活性の順で見ると意思決定が速くなります。詳しくはKPI設計と運用ガイドへ。
1. 「自分ごと化」は何で起きるのか|目的→裁量→成果の可視化
導入:自律性は“責任の押し付け”では育ちません。人は「意味が分かり」「選べて」「結果が見える」ときに行動が続きます。マネージャーはこの3条件を仕立てます。
要点:
- 目的の合意:誰の、どの瞬間の、何を良くするための仕事か。
- 裁量の設計:決めてよい幅(仮説・実験・リリース判定)を明文化。
- 成果の可視化:Aha%、TTV、Dτなど“自分が動くと変わる”指標で振り返る。
コピペ素材|目的一行フォーマット
誰の:月末に忙殺される中小企業の経理主任 どの瞬間:請求処理の「結果確認」で迷う瞬間 何を:迷いをなくし、次の行動が1クリックで分かるようにする
まとめ+具体例:この一行をレビュー冒頭で毎回読み上げるだけで、仕様議論が「誰の得か」に立ち戻り、メンバーの提案が相手起点に変わります。
2. なぜ「良質な問い」が効くのか|視座・動機・学習のメカニズム
導入:問いは、視座(見る高さ)を引き上げ、動機(自分の意思)を生み、学習(意味づけ)を深めます。指示は“正解を当てる競技”、問いは“意味を作る対話”。ここが自律の分岐点です。
問いが効く理由(3つ):
- 視座が上がる:「その先に誰がどう楽になる?」で時間軸・当事者が広がる。
- 自己決定感が生まれる:自分の言葉で選んだ道=努力が継続しやすい。
- 学習が循環する:仮説→実験→振り返りが“自分の物語”になる。
日常での使い方(会議・Slack・1on1のミニ問い)
会議:この仕様、ユーザーの5秒後に何が変わる? Slack:そのPR、誰の不安を1つ減らす? 1on1:今日の判断、3ヶ月後の私たちに何を残す?
30日で起きる変化(実例):
- Week1:質問が「どうやるか」から「何のために」に変わる。
- Week2:レビューで“自分から代替案”が出る(提案率が上がる)。
- Week3:PR本文に「誰向けの効果」を自発追記(ナレッジが残る)。
- Week4:実験の起票が自走(マネージャー起点→メンバー起点へ)。
実務テンプレ|問いカード(印刷/Notion用)
・誰のどの瞬間を良くする?(一人称で) ・この変更のAhaはどこで起きる? ・“やらない場合”のコストは?(ユーザー/チーム/将来) ・3週間後に撤退するなら、何が起きたから?
3. 1on1の実装|「感情→思考→行動」の3層で育てる
導入:自律を阻むのは、スキル不足よりも“意味が曖昧”“不安で進めない”。1on1は進捗管理ではなく、感情の安全を整え、思考を整理し、行動へ具体化する場にします。
進め方(30分):
- 感情:今週の気分は?やりづらさは?(5分)
- 思考:一番の論点は何?その根拠は?(10分)
- 行動:いつ・誰と・何を・どの基準でやる?(15分)
育成シートの例(毎週3行だけ)
・自分の言葉で再定義できたこと: ・自分で決めたこと(範囲/基準): ・次週、私が“手放す”行動:
具体例:「レビューで話せない」メンバーに対し、次回は“完璧より道筋”で話す約束→録音を一緒に聴き、良かった一言を言語化→翌週の会で本人から先に手を上げるようになった。
4. 任せる幅の広げ方|「自律のはしご」5段階
導入:一気に丸投げは失敗します。決裁の基準を共有し、安全網つきで段階的に上げるのがコツです。
自律のはしご:
- 私が決める(観察してもらう)
- 一緒に決める(基準を解説)
- あなたが提案→私が決裁
- あなたが決める→私が事後レビュー
- あなたが決める→あなたが全体共有(スケール)
「任せる契約」テンプレ
範囲:A/Bテストの企画〜実装〜判定 基準:Aha ±0pt維持 / TTV p95 -10% / Dτ +5ptで採用 報告:週次Slack #aha共有に3点(学び/次手/ブロッカー)
具体例:はしご3→4へ移行した週、メンバーの提案で“結果画面の利益先出し”実験を実施。採用基準クリアで横展開までリードした。
5. フィードバックの質を上げる|SBI+選択肢+未来
導入:伝わらないフィードバックは、相手の自己効力感を下げます。SBI(状況・行動・影響)に、選択肢と未来を足すと、自律を促す対話に変わります。
テンプレ:
状況:先週のレビューで 行動:質問が来たときに黙ってしまった 影響:仕様の論点が曖昧なままになった 選択肢:事前に論点カードを作る / その場で「考える時間ください」と宣言する 未来:どちらでいく?来週一緒に振り返ろう
具体例:これを2週繰り返すだけで、本人から「次回は先に論点を3つ掲げます」と宣言が出るようになった。
6. 日常運用の型|“問いが回る”チーム習慣
導入:問いをイベントにしない。日常に溶かすと、全員の視座が上がります。
- 朝会:昨日の学び1行/今日の問い1行。
- PRフォーマット:「誰の何がどう良くなるか」を先頭に必須化。
- デモデイ:機能ではなく「価値の変化」を発表(Aha%/Dτのグラフ)。
- 失敗ログ:「撤退の理由カード」をNotionで公開。
Slackテンプレ:
#aha共有(今週) ・学び:結果画面、利益先出しでDτ +6.4pt ・問い:この一文は誰の不安を減らした? ・次手:請求一覧にも展開。判定は同指標。
7. 30-60-90日ロードマップ|自律が芽生えるまで
導入:育成は“点”ではなく“線”。3段階で狙いを絞ると、手応えが出ます。
- Day 1–30:問いを配り、目的一行を全会議で唱える。提案率と質問の質が変化。
- Day 31–60:任せる契約で範囲を広げる。本人起点のA/Bが回り、実験数が増える。
- Day 61–90:本人が“一枚絵”で全体共有。横展開と後輩コーチングが始まる。
チームKPI(育成版):提案率/自己起票の実験数/決裁までの時間/横展開数。これらが揃うと、自律は加速します。
8. よくある失敗と回避策
- 問いが抽象的すぎる:時間軸と当事者を入れる。「3週間後のCSの1日がどう変わる?」
- 丸投げ:基準と報告の型がない任せ方。任せる契約で安全網を。
- “正解”で論破:問いの後に答えを言ってしまう。沈黙に耐える時間を設ける。
9. ケース:問いで視座が上がった30日
状況:若手PdMAさん。レビューで指摘待ち、実験はマネージャー起点。
介入:毎会議の冒頭で目的一行、毎日Slackに「今日の問い」。1on1でSBI+選択肢。任せる契約は“結果画面の文面テスト”。
変化:
- Week2:Aさんから「利益先出し」案が出る。PR先頭に“誰の何が”を自発記述。
- Week3:A/B実験を自走。判定基準を自分で読み上げ、全体共有。
- Week4:横展開提案まで完了。以後、後輩のレビューに問いを持ち込む側へ。
結果(チーム指標):提案率 +28pt、自己起票の実験数 0→3/週、決裁までの時間 -35%。


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