「インタビューしたのに、次の打ち手が決まらない……」——ジュニアPdMからよく聞く悩みです。結論から言うと、“目的 → 仮説 → 対象 → 質問設計 → 実施 → 記録・分析 → 意思決定”の順で進めれば、ユーザーインタビューは再現性のある武器になります。
この記事では、未経験〜ジュニアPdMが最短で成果につなげるための完全ガイドを、現場での学び(企業名・具体数字は非公開)をベースに整理しました。会話例・質問テンプレ・失敗回避リストまでまとめてあるので、今日から実装できます。
1. まずは“目的設計”で9割決まる
インタビューは「聞き出す場」ではなく、意思決定の材料を集める場です。次のどれを決めたいのかを最初に一つだけ選びます。
- ペインの特定:離脱の理由、躊躇の瞬間、代替行動の実態
- 価値仮説の検証:「〇〇が価値だ」という前提が現実にフィットしているか
- フロー設計の修正:初回価値到達(TTV)を遅らせている摩擦の発見
目的が決まれば、質問は自然と削れます。逆に目的が曖昧だと、質問は増え、ノイズが増えます。
2. 仮説 → 対象 → リクルートの型
私の基本はこの順番です(BtoBtoCの立ち上げ時に定着させたやり方)。
- 仮説を1行で言語化(例:「初回のプロフィール作成が長すぎて離脱している」)
- 対象を明確化(例:直近1週間で登録→途中離脱した人/登録完了後1週間以内の継続者)
- リクルート条件と謝礼(必要人数・属性・実施方法、日程候補)
この設計メモをチームで共有し、合意が取れてから動くと、後工程の衝突が激減します。
3. 質問設計の黄金ルール(テンプレつき)
誘導しない・未来予測をさせない・事実を掘る。これだけ覚えておけば、ほぼ外しません。以下は私の定番テンプレです。
3-1. 導入(アイスブレイク)
- 「今日は〇〇の体験について、実際にやったことを中心に伺います。正解はありません。気軽に思い出しながら教えてください」
- 「録音は社内共有のみで使い、個人が特定される形では扱いません。問題なければ始めますね」
3-2. 行動起点の深掘り(コア)
- きっかけ:「最初に〇〇を使おうと思った瞬間を、できる範囲で時系列に教えてください」
- 選択の裏側:「その時、他にどんな選択肢がありましたか? それを選ばなかった理由は?」
- 摩擦の瞬間:「一番『うっ…』と止まったステップはどこでしたか? その時、何が起きていました?」
- 代替行動:「もし〇〇がなかったら、どうしましたか? 直近で似た体験は?」
- 継続の理由(継続者向け):「続けている理由を3つ挙げるとしたら? その中で一番大きいのは?」
3-3. プロービング(掘り下げ)の合言葉
- 「それは具体的にどういうことですか?」
- 「最後にそれをしたのはいつですか? その時まず何をしました?」
- 「ほかにありますか?」(Silent Probe:沈黙を恐れない)
3-4. やってはいけない質問
- 未来予測:「もしこの機能があったら使いますか?」→ 過去の事実を聞くに置き換える。
- 二重質問:「AとBで困ったことは?」→ 一問一意。
- 誘導:「やっぱり◯◯は使いづらいですよね?」→ 中立な言い回しに。
4. 会話でわかる“良い掘り下げ”の例
私:「最初につまずいたのはどのステップでした?」
ユーザー:「プロフィール写真を探すのに時間がかかって…」
私:「最後にその作業をしたのはいつですか? まず何をしました?」
ユーザー:「スマホのアルバムを開いて、でも顔がはっきり写ってるのがなくて…」
私:「その時、画面には何が表示されていました?」
ユーザー:「選ぶボタンが小さくて、戻ると消える感じで…」
このやり取りだけで「写真選択UI」「戻る時の保持」「完了までの所要時間」の仮説が立ちます。事実の粒度まで降りられると、実装の会話に直結します。
5. 実施オペレーション(当日の動き方)
- 場づくり:最初の3分は環境説明+同意+アイスブレイク。専門用語は使わない。
- 役割分担:進行1・記録1(要点とタイムスタンプ)。可能ならPMとデザイナが同席。
- 録画・録音:端末の通知は必ずオフ。メモは「発言の要旨+時刻+画面状態」。
- 終了3分前のまとめ:「今日一番印象に残ったことは?」で再確認。
6. 失敗あるある&回避策
- 仮説が多すぎる:一回のインタビューで仮説は1〜2本に絞る。残りは次回。
- 人数で安心する:n数より行動の一貫性を見る。5人で十分なことが多い。
- 議事録が“感想文”:発言の抜粋(時刻) → 観察(事実) → 解釈(仮説) → 次の検証の順で残す。
- 答え合わせが遅い:当日30分の即時ふりかえりで施策の当たりを決める。
7. 記録・分析・意思決定までの“つなぎ”
おすすめは簡易なアフィニティと、意思決定メモの併用です。
- カード化:発言の断片を1テーマ1枚で付箋化(デジタルOK)。
- グルーピング:「同じ摩擦」を束ねて、頻度の高い山を作る。
- 命名:「写真探しコスト」「戻ると消える不安」など、チーム内で通じる短い名前に。
- 意思決定メモ:課題 / 機会 / 対策候補 / 捨てた案 / 次の検証を1枚に。週次で更新。
8. BtoBtoCで効いた“現場の工夫”(実例・匿名)
立ち上げ期に、継続率の谷が消えなかった時期がありました。私たちは「初回体験の摩擦」を洗い直し、“写真を選ぶ・説明を読む・次へ進む”の3点に絞って短時間のインタビューを連続実施。会話の要点は次の通り。
- 説明が長いと読まれない。例示>説明に置き換えると理解が早まる。
- 「戻る」で作業が消える不安が大きい。状態保持+安心の文言で離脱が減る。
- 完了までの目安時間が見えない。進捗ステップで先が読めると継続しやすい。
この学びを小さく反映したところ、TTVが目に見えて短縮。以降、“インタビュー → 小さなUI変更 → すぐ計測”のループを標準化しました。
9. そのまま使えるスクリプト(抜粋)
■導入(1分)
今日は〇〇のご利用体験について、実際にやったことを中心に伺います。正解はありません。録音は社内共有に限ります。問題なければ始めますね。
■行動の時系列(5分)
最初に〇〇を使おうとしたきっかけを、できる範囲で時系列に教えてください。
■選択と理由(5分)
その時、他に検討した手段はありましたか? それを選ばなかった理由は?
■摩擦の瞬間(7分)
一番止まったステップはどこでした? その時、画面では何が起きていました?
■代替行動(3分)
もし〇〇がなければ、どうしていましたか?
■クロージング(2分)
今日の話で、一番モヤモヤしていることは何ですか?
10. さらに学ぶ(関連記事・内部リンク)
11. 有料note&特典テンプレ
この記事のスクリプト全文・同意書サンプル・ふりかえりシート・メモの書き方は、有料noteで配布しています。購入者特典として、以下のPDFもご利用いただけます。
- PdMスキルテンプレート集(PDF)
- キャリア戦略シート(PDF)
ミニマムでいいので、まずは5本。今日のスクリプトで短時間インタビューを回し、“事実の山”を作るところから始めましょう。
12. まとめ:判断材料は“現場の事実”から
ユーザーインタビューは、特別な才能よりも手順の正しさで差がつきます。目的を一つに絞り、行動の事実を掘り、即日ふりかえりで次の一手に接続する。これを続ければ、PMF前後の迷いが減り、チームの議論は前に進みます。次のスプリントまでに、まず1回。あなたのプロダクトに必要な答えは、必ず現場に転がっています。


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