「作ったほうが早い?」——会議の空気がそう囁く瞬間、私はいったん深呼吸します。BtoBtoCのゼロイチでは、作り込みは“安心”をくれるけれど、不確実性は減らない。むしろ、“最小で学ぶ”ほうが速い。私が転機を感じたのは、Aha体験とTTVを先行指標に置き、MVPの粒度を徹底的に小さくしたときでした。顧客の反応がクリアに見え、意思決定のスピードも、チームの納得感も、目に見えて変わります。
この記事は、ジュニアPdMが今日から使えるMVP検証の型とテンプレを一つにまとめた実践ガイドです。会議で“そのまま貼れる”文面・表・受入基準も添えました。
1. 仮説は“行動の変化”で書く(先行指標ドリブン)
リストの前に一言。MVPの仮説は「◯◯機能が必要」では弱い。ユーザーの行動がどう変わるかで書くと、検証の設計が一気に楽になります。
- ねらい:機能ではなく“価値の因果”を検証する。
- やり方:「この施策が入ると、◯◯なユーザーのAha到達率が上がり、TTVが短くなる」の形式で一行に。
- 失敗と直し方:“好き/嫌い”の定性だけで判定→Aha到達・翌日活性など先行指標でYes/Noを切る。
仮説カード(コピペOK)
【対象】新規/スマホ/通勤中 【現象】初回設定の途中で離脱 【仮説】住所入力の摩擦がAhaを遅らせている 【施策】郵便番号検索を先頭に/数字キーボード/サンプル表示 【期待する変化】Aha到達率 +Xpt / TTV -Y% 【判定指標】reach_aha / time_to_aha / next_action_d1
2. MVPの粒度は3段階で小さくする
“作りすぎ”は検証の敵です。BtoBtoCの現場では、以下の順で粒度を落とすとスピードが上がります。
- コンシェルジュMVP:裏側は手作業で代替(ユーザーには完成品の手触り)。
- ウィザード・オブ・オズ:自動に見せつつ、判定だけ人間が行う。
- クリックダミー/ノーコード原型:遷移とコピーに反応を見る(実データは後回し)。
- ねらい:実装コストを抑え、“価値の有無”だけ先に切る。
- 失敗と直し方:全部自動化したくなる→最初は「見せかけ」でも良い。価値が確かなら本実装は後追いで間に合う。
3. 実験計画:誰に・どこで・何を測る
ここは型で一気に決めます。下のテンプレは、私がBtoBtoCで繰り返し使っているものです。
【実験タイトル】オンボード住所入力の摩擦を潰す 【対象セグメント】新規/モバイル/広告流入 【シナリオ】LP→登録→住所入力→Aha(◯◯表示) 【手段】クリックダミー + マイクロコピー変更 【期間/母数】◯日/◯◯セッション(最小でOK) 【主要指標】Aha到達率/到達時間/翌日活性 【サブ指標】入力エラー率/ステップ別離脱 【判定基準】Aha到達率 +Xpt 以上 または TTV -Y% 以上で採択
4. 設計の落とし込み(PRD断片/受入基準)
“軽い実験”でもPRD断片は残します。受入基準があるだけで、開発とCSが同じ景色になります。
【目的(Outcome)】初回Ahaを早め、翌日活性の底上げ 【範囲(Scope)】住所入力ステップのみ/モバイル優先 【受入基準(Excerpt)】 - reach_aha の到達率が対照比で上昇している - time_to_aha の中央値が短縮している - 入力エラー率が悪化していない
5. 現場で使う文面(Slack/募集/合意形成)
◆ ユーザー募集(5〜10分の軽量インタビュー)
【ご協力依頼】住所入力で迷った瞬間を教えてください(5〜10分) Ahaまでの最短ルートを直したく、初回の“つまずき”を探しています。 OKなら「参加します」とだけ返信ください。日程をお送りします。
◆ 実験合意のSlackメモ
#exp-aha-zip 目的:Aha到達を早める(住所入力の摩擦を削減) 仮説:郵便番号検索を先頭に置くとTTVが短くなる 期間:今週木〜金(新規モバイルのみ) 判定:Aha到達率 +Xpt 以上 or TTV -Y% 以上 リスク:既存導線の混乱→リリース前にQA/案内文調整
6. BtoBtoCならではの“二層検証”
B(事業側)とC(エンド)の二層が絡むため、意思決定者の仕事都合とエンドの“時間都合”が衝突しがちです。私は次の順で潰します。
- 意思決定者のKPI仮説:導入動機/成果指標/懸念の棚卸し(例:工数、セキュリティ)。
- エンドの摩擦仮説:“使い始め”の心理障壁(情報不足/入力地獄/価値の遅延)。
- 共有する先行指標:Aha/TTV/翌日活性を二層で共通化。
7. 失敗あるあると直し方
- 見た目が完成→学びが薄い:つい作り込む。→コンシェルジュ/WOz/クリックダミーの順で粒度を落とす。
- データで詰む:イベントが多すぎ。→開始/摩擦/到達/翌日活性の4本だけ先に埋める。
- 学習が散る:“結果だけ”の報告。→仮説→結果→示唆→次の一歩のテンプレで固定。
8. 学習ループを回す(週次リズム)
毎週の小さな更新が、月末の大きな変化を作ります。ここでも型で省エネ運用します。
【週次メモ】 ・今週の仮説:◯◯(行動の変化で記述) ・実験:◯◯(粒度/期間/対象) ・結果:Aha到達率/時間/翌日活性(スクショ) ・示唆:なぜそうなったか(仮説) ・Next:コピー/順序/省略のどれで当てるか
9. 関連コンテンツ(内部リンク)
MVPの当たりを引くには、オンボーディング・要件定義・ロードマップとセットで考えるのが近道です。以下も続けてどうぞ(すべて当サイト内)。
- オンボーディング設計とTTV短縮の完全ガイド|ジュニアPdMが最速で“最初の価値”に連れていく方法
- PdMが最初につまずく「要件定義」の壁:未経験でも乗り越えるための実践ガイド
- プロダクトのロードマップ作成に悩むジュニアPdMへ:基礎から実践まで
- 未経験PdMの「コミュニケーション術」|現場で信頼される会話のコツ
10. まとめ:作らずに“確かめる”勇気
作る前に、価値が動くかを確かめる。仮説を行動で書く→粒度を落として当てる→先行指標で切る→学習ループで積む。この4手が回り始めると、MVPは“早く作る競争”から“早く学ぶ競争”に変わります。まずは、明日の会議で仮説カードを一枚、貼ってみてください。
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