“考えないメンバー”をどう育てるか|問いで動かすマネージャーの技術
「考えないメンバー」──本当にそうでしょうか?
多くの場合、考えていないのではなく「考える前に答えを求める習慣」が染みついているだけです。マネージャーの役割は、その習慣を“考える習慣”に書き換えてあげることです。
1. “考えない”の裏にある構造を見抜く
まず理解しておきたいのは、「考えない」状態は怠慢ではなく構造の結果です。
例えば以下のような要因が多く見られます。
- 過去に「自分の提案が否定された」経験がある
- 常に“正解”を求められてきた文化がある
- 思考のための時間や場が与えられていない
つまり、「考えない人」は“考えにくい環境”にいるだけ。まずはその構造を壊すところから始めます。
2. 良質な問いで考えるスイッチを入れる
「なぜそう思う?」「もし◯◯だったら?」──この2つの問いが強力です。
具体的な問いのかけ方を見ていきましょう。
会話例:PdMとメンバーのやりとり
マネージャー:「この機能、どう改善できると思う?」 メンバー:「正直、わかりません…。」 マネージャー:「じゃあ、“何がわからないか”を一緒に整理してみよう。」 メンバー:「うーん…ユーザーが本当に使ってる場面が想像できていないです。」 マネージャー:「なるほど。じゃあ次の1on1までに、実際の利用データを3件見てみようか。」
このように、“答えを与えずに問いで導く”のがポイントです。問いを積み重ねると、メンバーは「考えていいんだ」と気づき、行動が変わり始めます。
任せる=放任ではなく“支援の構え”【完全ガイド】
「任せる」は“丸投げ”でも“細かく指示する”でもありません。マネージャーが握るのは〈責任と文脈〉、メンバーに渡すのは〈機会と意思決定〉。その間をつなぐのが“支援の構え”です。
支援の構え=3つの約束
- 結果は自分が持つ:最終責任はマネージャー。外部への説明・盾は自分がやる。
- 機会はあなたに渡す:意思決定のハンドルはメンバーへ。失敗の範囲はガードレールで守る。
- 途中は一緒に進む:壁打ち・チェックイン・関係者調整は伴走。放任はしない。
任せる前に整える「7つの設計」
- 目的:なぜ今やるか(事業・チームの意義)
- 成果物:フォーマット/粒度/締切(例:A4 1枚の提案書+図1枚)
- 権限:本人が決めてよい範囲(例:影響小は本人判断、影響中は事前共有…)
- ガードレール:やらないこと・禁止事項・品質基準
- チェックイン:頻度/所要時間/持ち込む論点(週1×20分、論点は「仮説・不確実性・次の一歩」)
- 資源:関係者、過去資料、ダッシュボード、予算・時間の上限
- 撤退線:どこでピボット/中止するか(事前合意で心理的安全を担保)
キックオフ用メモ(コピペ)
【目的】◯◯を△月内に検証し、Dτ+3ptを狙う 【成果物】A4提案1枚+ダッシュボード簡易ビュー 【権限】ユーザー10名ヒアリング/小規模ABは本人判断で実施可 【ガードレール】料金画面は触れない/通知は最大1回 【チェックイン】毎週火 15:00-15:20(論点:仮説・不確実性・次の一歩) 【資源】CS佐藤/データ山本/過去案件#miro_123 【撤退線】2週目終了時点でCVR±0かつDτ変化なし→仮説見直し
「沈黙を待つ」が正解ではない――介入の基準
待つことは重要ですが、待ちすぎは放任です。次のサインが出たら“問い+支援”で介入します。
- 30秒×3回の沈黙(言語化できない)→問いの枠を提供:「誰の/どの瞬間/何を/どれだけ?」
- 同じところで2週連続停止→スコープを切る:「まずAセグメントだけ/チャネルはXに限定」
- 関係者調整で足が止まる→盾になる:マネージャーが先に根回し・場を設定
会話例:沈黙→再起動
MGR:「今どこで詰まってる?」 MBR:「…(沈黙)」 MGR:「“誰の/どの瞬間/何を/どれだけ”で言うと?」 MBR:「既存SMBの月末業務で、“請求の突合”を30分短縮したい、です」 MGR:「よし。その仮説で2日後までに“最初の一歩”だけ設計しよう。壁打ちはいつにする?」
支援の具体:壁打ち・チェックイン・盾
- 壁打ち:解を渡さず、問いの型を渡す(JTBD/RICE/5Whys)。10分で「仮説→次の一歩」まで着地。
- チェックイン:「振り返り→論点→決める」の3段。メモはA4半分で十分。
- 盾:ステークホルダーの期待調整・説明責任はマネージャーが前に立つ。
週次チェックインメモ(コピペ)
【今週の前進】Aha到達率 +2.1pt(オンボ文面修正) 【詰まり】CS導線の例外対応が未整備→Aha前で離脱 【決めごと】来週は「例外の先出し」パターンを小実装。MGRが法務と先に擦り合わせ 【次の一歩】メール文面AB/FAQ1項目追加/CSスクリプト更新
任せるときの失敗と対策
- 丸投げ:目的/権限/撤退線が曖昧 → 7設計を明文化
- マイクロマネジメント:都度レビューで自走が死ぬ → 定周期の“場”だけ用意
- 責任転嫁:うまくいかないと本人の責任に → 外向き説明はMGRが一手に引き受け、内側は学びに変換
ケースで学ぶ:3つの実例
- 新人×ユーザー調査:枠=JTBD/RICEを渡し、合計10名のヒアリングを任せる。週1壁打ちで「質問の順」を整え、Dτ+4.3ptに。
- 中堅×A/B設計:成果=「仮説1枚+計測設計」。権限=小規模ABは本人判断。結果、CVR+6.8%、本人は次回から自走。
- 横断PJ×シニア:役割の衝突で停滞。MGRが先に役割宣言を内政し、本人は実装に集中。意思決定遅延−42%。
“任せる=待てる。だが待ちすぎない”の運用フロー
Day0 キックオフ(7設計を合意) Day1-3 初手の一歩(仮説1枚/最小実装の設計) 毎週 チェックイン20分(仮説・不確実性・次の一歩) いつでも エスカレーション合図:「赤:止まった/黄:迷い/青:承認だけ」 月末 レトロスペクティブ(個人ではなく仕組みを改善)
計測:育成KPIで“支援の質”を可視化
- Owner比率:本人起点の提案割合(↑なら自走)
- Decision Latency:意思決定の平均所要(↓なら支援が効いている)
- リワーク率:やり直し比率(ガードレール設計の妥当性)
- Escalation密度:早期相談の件数(心理的安全の指標)
会話テンプレ(Slack / 1on1)
Slack:任せる宣言+盾の明確化
「このテーマは◯◯さんに任せたい。意思決定のハンドルは◯◯さん。 影響小〜中の判断はその場でOK。外向きの説明・火消しは私がやる。 毎週火曜20分だけ“論点整理”の場をください。」
1on1:問いで伴走
「誰の、どの瞬間を変えたい?」「Ahaはどこで“目で分かる”?」 「最初の一歩は?」「来週、何が見えていたら前進と言える?」
FAQ
Q. 任せると品質が下がりませんか?
A. 下がるのは“設計がない任せ方”です。成果物の定義・ガードレール・撤退線があれば品質は担保されます。
Q. 待った結果、進まなかったら?
A. 介入基準(沈黙30秒×3回/2週停止/関係者の詰まり)を合図に、問い+スコープ調整で再起動します。
4. “考える時間”をチーム設計に組み込む
実務で考える時間が取れないメンバーは、そもそも“考える余白”がない状態です。PdMマネージャーが意識すべきは「問いを立てる時間を仕組みにする」ことです。
- スプリントレビューで“気づきの時間”を10分入れる
- 週次報告に「今週の問い」を一行入れる
- 1on1で「どんな仮説を持っている?」と聞く
このわずかな仕組み化が、思考を「タスク」から「意思決定」へ引き上げていきます。
5. 伝え方の質が成長を決める
そして最後に重要なのは「伝え方」です。考えないメンバーに対して、正論をぶつけても響きません。
問いの裏に「期待している」というメッセージを添えること。これだけで反応が変わります。
例:
「このテーマ、◯◯さんならきっと面白い仮説を出せると思ってる。どう考える?」
“信じて任せる構え”が伝わると、メンバーの視座が変わります。問いとは、指示よりも強い信頼のサインです。
関連記事
有料noteへの導線
さらに実際の1on1で使える「問いテンプレート集」や「壁打ち設計フォーマット」はnoteで公開しています
PdM初心者のための仕事大全【保存版】


コメント