ローンチ前夜の21時、私はモニターの前で深呼吸をしました。仕様は固まっている。ABの判定日も置いた。けれど手が止まる——「リリースノート、どう書けば伝わるんだろう」。
私は過去の失敗を思い出しました。日記のような「やったこと羅列」で出した結果、問い合わせが増え、活用は伸びず、会議では「伝え方が弱い」と反省会。そこから学んだのは、リリースノートは“行動を生む文章”だということ。読む人に「次に何をすればいいか」を一瞬で渡せれば、数字は静かに、でも確実に動き始めます。
1. リリースノートの目的は“行動を起こしてもらう”こと
書く前に、読み手と目的を1分で言葉にしましょう。読み手は大きく3者です。ユーザー(使い方が分かれば価値に近づく)、CS/営業(問い合わせ対応・提案力が上がる)、社内チーム(判断が速くなる)。
つまり、良いリリースノートとは「誰が」「何を」「いつ」やれば良いかが分かる文章です。KPIとのつながりを示すと、会議も進みます(指標設計の基礎はKPI設計と運用)。
2. “読まれて動く”リリースノート・テンプレ(各行の狙いつき)
完璧な長文は要りません。以下をそのままコピペし、角括弧内を書き換えれば出せます。各行に「なぜそれを書くか」を添えました。
【タイトル】[誰に何ができるようになったか] を10〜14文字で
- 例:「保存が1タップに」「請求書をまとめて送信」
【ひとことで】[困りごと→解決] を1文
- 例:「戻ると入力が消える不安をなくしました」
【できること】箇条書きで3つまで(動詞で始める)
- 例:「保存が1タップ」「戻っても状態保持」「やり直しはUndo」
【使い方】最短3手で(スクショ1〜2枚)
- 例:「候補から保存をタップ→スナックバーで完了→Undoで戻せます」
【対象/権限】誰にいつ届く?
- 例:「iOS/Androidの全ユーザー。来週火曜に段階展開」
【注意点】副作用やできないこと
- 例:「一括保存は未対応。個別のみ」
【問い合わせ】CS向けの一言台本
- 例:「『戻っても消えないので安心して保存できます』と案内」
【KPI/判定】見る指標と日付
- 例:「Aha到達率+3pt/TTV-1分を目標。判定はW6(金)」
「できること」を多く並べないのがコツです。人は3つを越えると忘れます。Aha到達に効く要素に絞りましょう(オンボーディングの設計は転職直後90日ガイドの序盤が参考)。
3. 社外アナウンス文面(Slack/メール/Twitter)——短く、次の一手を渡す
「告知したのに使われない」の多くは、文面が“作文”になっているから。読んだ人がすぐ試せるよう、動詞で始める一文+スクショ1枚が鉄板です。
- Slack(コミュニティ/公開チャンネル)
「今日から保存が1タップになりました。候補リスト→保存→Undo可の3手です。スクショ参照。
使ってみて『ここで迷った』をぜひコメントしてください(Aha到達率+3ptを狙っています)。」 - メール(既存ユーザー)
件名:戻っても消えない保存ができるようになりました。
本文:1)保存をタップ 2)完了表示 3)Undoでやり直し——これだけ。1分で“安心して集める”体験に。 - Twitter/LinkedIn
「保存が1タップになりました。戻っても消えません。#プロダクトアップデート(スクショ)」
4. 社内連携(CS/営業/法務/開発)——“1枚メモ”で合わせる
ローンチは社外だけのイベントではありません。CS・営業・法務との温度差があると、せっかくの改善が「伝わらない」で終わります。会議を増やすのではなく、1枚メモを配るのが早道です。
■誰に:CS/営業/法務(各5分で読める)
■何を:できること3つ/できないこと/問い合わせ台本/契約や規約への影響
■いつ:段階展開のスケジュール(%と日付)
■どこで:問い合わせフォームの選択肢を更新(担当:CS)
“誰が次に何をするか”を書き切ると、準備の齟齬が減ります。優先順位のズレが起きたら、ここで整理します:優先順位判断フレーム。
5. 成功の見方:KPIとフィードバックの取り方(先行指標で評価)
ローンチの勝ち負けは、翌朝には半分見えます。売上だけを待たず、先行指標で判断を。以下の3点をトップで追いましょう。
- Aha到達率:保存成功など価値イベントの達成割合(前週比で+◯pt)。
- TTV中央値:価値までの時間(分)。1分縮むと体感が変わる。
- 問い合わせ/新規UU:CSの負荷。副作用の早期検知用。
数値の置き方・ダッシュボードの作り方はKPI設計と運用が詳しいです。
6. よくある失敗と、やさしい直し方
私も何度もやらかしました。だからこそ、同じ穴に落ちないために短く直しましょう。
- 失敗:日記のように羅列 → 直す:「できること3つ」だけを動詞で。
- 失敗:スクショが多すぎる → 直す:“最短3手”の図だけにする。
- 失敗:対象や時期が曖昧 → 直す:「誰に・いつ・どれくらいの割合で」を数字で書く。
- 失敗:KPIが売上だけ → 直す:Aha/TTV/問い合わせで先に判断。
7. 7日間ローンチ計画(現場で使える実行メモ)
「何からやる?」に迷わないよう、日ごとに1つだけ進めます。私はこの順で走らせています。
Day-6〜-5:PRDの該当セクションを最終更新(IN/OUT/非目標・受け入れ基準)
Day-4:CS/営業向け1枚メモ作成(できること・台本・FAQ)
Day-3:スクショと“最短3手”GIFを用意(迷いがちな1歩目を強調)
Day-2:KPIのダッシュボードを作成(Aha/TTV/問い合わせの3行)
Day-1:リリースノート確定(できること3つ/対象/段階展開)
Day0:社外アナウンス(Slack/メール/Twitter)+段階展開開始
Day+1:朝会で数値レビュー→AB改 or 文言修正→Decision Logに1行
PRDの骨組みや受け入れ基準の書き方は、こちらの現場テンプレが役立ちます:要件定義の書き方。
8. 物語:一通のメールが静かに数字を動かした夜
ローンチ当日の20時、CSのメンバーから短いDMが届きました。
「今日の問い合わせ、“保存が消える”がゼロです」
ダッシュボードのAha到達も、ゆっくりと上向いていました。派手な花火はない。でも、行動を生む文章がちゃんと届いた時、数字は丁寧に反応します。私はDecision Logに1行だけ書き足しました。「短いリリースノートが、長い会議を減らした」。
9. さらに読みたい方へ(内部リンク)
10. 有料note&特典
この記事のテンプレ(リリースノート雛形Doc/1枚メモ/社外アナウンス文例集)は、有料noteで配布しています。購入者特典:PdMスキルテンプレート集(PDF)/キャリア戦略シート(PDF)。併せて、別記事の有料note(ポートフォリオ/面接の深掘り)もどうぞ。
11. まとめ:短く、具体的に、次の一手を渡す
良いリリースノートは、読み手が“次の行動”に迷いません。「できること3つ」「最短3手」「対象と時期」「KPIと判定」。この4点を押さえれば、未経験〜ジュニアPdMでも、ローンチの翌朝から数字で会話できます。次のアップデートで、まずはテンプレをそのまま使ってみてください。きっと、あなたのプロダクトにも静かな追い風が吹きます。


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