PdMのためのプロダクトPLの作り方|3枚テンプレで“意思決定に効く”数字を作る
「この機能、やる/やらないの判断、根拠は?」——会議で受けた問いに、私は数式の中で迷子になりました。
目の前のKPIは動いている。でも、事業への効きが説明できない。そこで一歩引いて、プロダクト別PL(損益)を立てた瞬間、優先順位と会話が一気にクリアになりました。
本稿は、未経験〜ジュニアPdMが1週間で“使えるPL”を立ち上げるためのガイドです。
売上とコストの並べ方ではなく、先行指標(Aha/TTV/翌日活性)→KPI→PLへと接続する実践手順を、テンプレ・Slack文面・レビューの型までコピペOKでまとめます。
1. まずは“3枚で始める”プロダクトPL
ねらい:完璧主義を捨て、意思決定に必要な最小限の数字を3枚で回す。
やり方:「収益モデル」「コスト分類」「仮説と優先順位」の3枚に切る。
よくある失敗:会計の完全性を求めて遅れる。→“桁で合う”粗度から始める。
テンプレ1|収益モデル(1枚)
単価(ARPU/ARPA) × 有料転換率 × 継続(月) = 売上 ドライバー: - Aha到達率(初回価値) - TTV中央値(Aha到達までの時間) - 翌日活性(再起動) 関連KPI: - トライアル→有料転換率 - 解約率(チャーン)
テンプレ2|コスト分類(1枚)
変動費:決済手数料、通信/外部API、サポート可変費(1件あたり) 固定費:人件費(開発/CS/企画の按分)、SaaS、減価償却 獲得費:広告費、セールス、パートナー手数料 指標:CAC(顧客獲得単価)、Payback(月)、粗利率
テンプレ3|仮説と優先順位(1枚)
仮説: - TTVを30%短縮すると、有料転換率が+Xpt→売上Y%増 - CS応対の自動化で、1件あたり変動費が-Z円→粗利率+Wpt 賭け(Now/Next/Later): - Now:オンボード文面の再設計(TTV短縮) - Next:料金ページの摩擦削減(転換率) - Later:プラン改定の探索(ARPU)
2. 先行指標→PLの“配線図”を作る
ねらい:日々のKPIの変化が、どの勘定に響くかを言語化する。
やり方:先行指標からPL項目へ、矢印で接続するシンプルな表を作る。
失敗と直し方:「PV増えた」で終わる。→“誰の、何の行動が、何円に効くか”まで落とす。
| 先行指標 | 中間KPI | PLの効き先 | 補足 |
|---|---|---|---|
| Aha到達率↑ | トライアル完了率↑ | 売上(転換率↑) | オンボード摩擦の削減。TTV短縮の設計参照。 |
| TTV↓ | 初回成功体験の時間↓ | 売上(転換率↑/解約↓) | 価値到達の早さは継続に効く。 |
| 翌日活性↑ | D1 retention↑ | 売上(LTV↑) | 再起動導線とリマインドの最適化。 |
| CS応対時間↓ | 1件あたり工数↓ | 変動費↓/粗利↑ | ヘルプ/自動化/プロセス設計。 |
“配線図”の前提となるインサイトは、ユーザーインタビュー完全ガイドの質問型で拾うと早いです。
3. 収益モデルの立て方:ARPU×転換×継続
ねらい:売上を“3つのノブ”に分解して、施策の当て先を明確にする。
やり方:ARPU(単価)、転換率、継続(月)に施策をひも付け。
- ARPU:プラン構成/価格表示/アドオン。料金ページはMVPで価値の通り道だけ出す。
- 転換率:オンボード摩擦、トラスト(導入実績・FAQ)、支払い体験。
- 継続:翌日活性→週次定着。リマインド文面は“次アクション”を強調。
Slack文面(料金ページAB開始)
#product-updates 【実験】価格表示の簡素化(ARPU↑/転換↑を狙う) - 変更:VAT表記の位置/文言、FAQをファーストビュー直下に - 測定:転換率、離脱率、ARPU、解約率(副作用チェック) - 期間:10日、優位性p<.05で継続判定
4. コストの見える化:変動/固定/獲得の3箱
ねらい:「売れても赤字」の構造を潰す。
やり方:1件あたり変動費、月次固定費、獲得費(CAC)を分ける。
- 変動費:決済手数料、API/インフラ、CS案件単価(自動化の効果が乗る)
- 固定費:人件費按分(開発/企画/CS)、SaaS、管理費(大まかな配賦でOK)
- CAC:広告+セールス等の獲得費。Payback(月)で回収スピードをみる
計算式(コピペ)
粗利=売上 − 変動費 貢献利益=粗利 − CAC 営業利益(プロダクト)=貢献利益 − 固定費(按分) Payback(月)= CAC / 月次粗利(1ユーザー)
優先順位の切り方は、RICEの使い方で賭けの大きさを揃えて議論するのが早道です。
5. 実務テンプレ:週次レビュー/判断ログ/ダッシュボード
週次レビュー(15分)
- 先行指標(Aha/TTV/翌日活性)の推移
- PLの変化:粗利/貢献利益の主要ドライバー
- 賭けの見直し:Nowを入替・縮小・深掘り
判断ログ(DECIDE-LOG:一行)
「TTV-30%を狙い、オンボード導線を再設計。成功条件=Aha到達率+15pt/Payback-1.0ヶ月。やらない案=機能追加。次の賭け判断=来週金曜。」
ダッシュボードの最小構成
- 先行指標:Aha到達率/TTV中央値/翌日活性
- 収益:ARPU/転換率/解約率
- コスト:CAC/1件変動費/粗利率
ロードマップの枠組みは、Now/Next/Laterの使い分けと合わせると迷いが減ります。
6. 30日チェックリスト(貼って使える)
- 3枚テンプレ(収益・コスト・優先順位)を作った
- 先行指標→PLの配線図を言語化した
- Payback(月)と貢献利益で施策の“効き”を見ている
- 週次レビューで賭けの入替を実行している
- “やらないこと”を明記し、合意形成に使っている
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まとめ:PLは“先行指標で動かす”とブレない
プロダクトPLは、会計の帳票ではなく意思決定の装置です。
先行指標→KPI→PLの配線図を作り、3枚テンプレで回すだけで、議論は数字と事実に寄ります。ジュニアPdMでも、ここからなら今日動けます。
さらに深掘る方へ:有料noteでテンプレ全種(PLひな形/RICEシート/判断ログ)を配布中。
特典:PdMスキルテンプレート集(PDF)/キャリア戦略シート(PDF)


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