金曜の夜、Jiraのボードは色とりどりのカードで埋まり、若手のPdMは椅子に沈み込んでいました。「来週のスプリント、どこから始めればいいのか…」。私はモニターを指して言いました。「順番は、テストから決めよう。つまり、受け入れ基準から逆算する」。
結論:スプリント計画は“受け入れ基準 → タスク分解 → 日次運用”の順に逆算すると、Aha(初回価値)・TTV(価値到達時間)・翌日活性に最短で効きます。
一週間の設計図:受け入れ基準から逆算する
「いつ誰が何をするか」は結果であり、出発点ではありません。まず“どうなったら完了か”を可観測な一文に固定し、そこから逆算してタスクを割り当てます。ねらい→やり方→失敗と直し方の3点を短くつなぐと、日次の迷いが消えます。
【逆算テーブル(コピペOK)】
受け入れ基準(例)
Given 新規ユーザーが初回ログインを完了
When 住所欄に1文字入力
Then 0.5秒以内に候補が3件以上表示/選択で自動補完
→ テストケース:P95応答0.5s、候補3件以上、選択時の自動補完
→ タスク:API選定/辞書準備/入力制御/計測イベント/文言
→ 日次の狙い:入力→自動化で摩擦を1点潰す
意思決定と価値づくりの全体像は、課題解決型PdM 完全ガイド/価値提供型PdMの設計図を先に押さえると接続が速いです。
月曜:スプリントゴールは“先行指標”で言い切る
スプリントゴールが曖昧だと会話が散らかります。売上のような遅行指標ではなく、Aha/TTV/翌日活性で「今週の変化」を定義します。ここが合意できると、優先順位と撤退条件まで自然に決まります。
【招集テンプレ】月曜朝の開始メッセージ
件名:今週のスプリントゴール(先行指標で定義)
Aha:25% → 32%(+7pp)
TTV:7.0分 → 6.0分(-1.0分)
翌日活性:12% → 15%(+3pp)
受け入れ基準:上記テストケースを読み合わせて合意
火曜:WBSではなく“テストケースから”タスクを割る
作業の羅列では速度は上がりません。テストケースに必要な最小構成要素だけを洗い、UI・データ・通知・計測をひとつの束にします。依存が多いものは次週へ逃がし、今週は“基準を満たす線”だけを通します。
【タスク分解チェックリスト】
- UI:フォーム内ヒントは5〜7語に圧縮(モーダル禁止)
- データ:サジェスト辞書の最小セットを準備(高速優先)
- 通知:成功後の次アクション導線(ディープリンク)
- 計測:
first_value_done/key_action_d1を実装 - 非機能:P95 0.5s/エラー時のリトライ設計
水曜:デイリーで“摩擦を1点だけ”潰す
中日こそ慎重に。Aha到達率/平均TTV/翌日活性を10:00に共有し、悪化している箇所をひとつだけ選んで潰します。迷ったら「入力→自動化」「説明→UI内化」のどちらで効くかを即決します。
【デイリー共有テンプレ】10:00に固定
Aha 28%(+3pp)/ 目標 32%
TTV 6.6分(-0.4分)/ 目標 6.0分
D1 13%(+1pp)/ 目標 15%
詰まり:住所入力→候補選択で滞留 → 今日は入力制御の補強に集中
計測の並べ方はKPI設計と運用ガイドがまとまっています。Aha→TTV→翌日活性の順で“使う”のがコツです。
木曜:中間レビュー30分の台本(読み上げ式)
中間レビューは“判断だけ”。資料は3枚(メーター、阻害要因、受け入れ基準の現状)。議論が散りやすいので、文面を固定した台本で読み上げます。
[00-05] 指標の差分(事実のみ)
[05-15] 受け入れ基準の未達箇所を1点選ぶ
[15-22] 今日中に潰せる手段:「入力→自動化」or「説明→UI内化」
[22-30] 受け入れ基準の再読み合わせ→担当/期限を一文で合意
金曜:受け入れデモ→学習の標準化
最終日は“可観測な完了”だけをデモします。次に、学習を1ページで資産化。翌週のスプリントで同じミスをしないための最低限の記録です。
【デモ台本と学習ログ】
デモ:Given/When/Then を読み上げ→操作→ログを提示
学習ログ:
前提:誰の何の不満か(25字)
結果:Aha +6pp / TTV -0.8分 / D1 +2pp
気づき:辞書は精度より速度が効いた
次の仮説:候補の最小件数=3で十分。UI文言をさらに圧縮
“一週間テンプレ”全体像(配布用)
この章はそのまま配布・貼り付けできます。入社直後のメンバーにも渡して使ってください。
Mon スプリント開始:先行指標のゴールを合意/受け入れ基準を読み合わせ
Tue テストケース→タスク分解(UI/データ/通知/計測/非機能)
Wed デイリー10:00:メーター共有→摩擦1点潰し(入力→自動化/説明→UI内化)
Thu 中間レビュー30分:未達1点の是正→合意
Fri 受け入れデモ:Given/When/Then 満たす/学習ログを1枚で共有
PRD断片(受け入れ基準起点)
厚いPRDは不要です。スプリントのために必要十分な断片を残し、実装と運用に橋をかけます。受け入れ基準は手で確かめられる粒度で固定します。
■ 背景:初回設定で滞留し、Aha到達率が低い
■ 目的:Aha 25%→32% / TTV 7.0→6.0分 / D1 12%→15%
■ 施策:住所自動補完/フォーム内ヒント/成功後24hリマインド
■ 受け入れ基準:
Given 初回ログイン
When 住所1文字入力
Then 0.5秒以内に候補3件以上/選択で自動補完
■ 非機能:P95 0.5s/障害時のフォールバック定義
よくある失敗と直し方
失敗の型を先に知っておくと、立て直しが速くなります。原因はシンプルで、対処もシンプルです。
- “タスク発進”で迷子になる: 受け入れ基準に戻り、テスト→タスクへ再分解。
- レビューが長い: 資料を3枚に固定。未達1点に絞って合意する。
- 数値が動かない: 先行指標の定義が曖昧。Ahaを「誰が・何を・何分で」で言い切る。
まとめ:テストから始めると、スプリントは進む
完了の定義を先に決め、そこから逆算して一週間を刻む。Aha→TTV→翌日活性の3枚で運用を回す。今日やることはひとつ——受け入れ基準を一文で書き、テストケース→タスクへ落とすこと。それだけで来週の迷いは大きく減ります。
FAQ
- Q. 受け入れ基準はどれくらい細かく書くべき?
- A. 30秒で読み合わせられる長さに。Gherkin風の4行以内で、誰が見ても同じテストができる粒度にします。
- Q. 指標が悪化したときは予定どおり続ける?
- A. 続けません。水曜の時点で“摩擦1点潰し”に全振りし、効果が薄ければ木曜に撤退を合意します。
- Q. タスクが多すぎて終わりません。
- A. 受け入れ基準を満たす線以外は次週に逃がす運用へ。速度は“線を通す”ことで生まれます。
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