結論:PRDは“旗(価値の定義)”、SRSは“地図(実装の定義)”。この二つを数で結ぶのがプロの仕事です。
朝いちのレビュー。PRDでは「入口→Ahaを3クリック・3分で」と旗を掲げたのに、SRSにはUI遷移やAPI一覧がびっしり。開発は迷い、QAは「どこまでが合格かわからない」。そこで私たちは、PRDの受け入れ基準(AC)を“価値の条文”としてSRSへ移送し、トレーサビリティで固定しました。以後、実装の迷子は消え、検収は短くなる。この記事では、章立て対応→移送テンプレ→非機能の数値化→データコントラクト→テスト設計→会議運用→具体例の順で、明日から使える実務に落とします。
PRDとSRSは何が違うか——“目的の文”と“方法の文”
PRDは「誰の、どの課題に、どんな価値を、どう測って、いつ判断するか」を一文で言い切る旗。SRSは「それを実現するUI/API/データ/制約」を地図として細密に描く文書です。両者が混ざると、価値はぼやけ、地図は厚くなるだけで遅くなります。だから、PRDに書くのは“何を達成するか”、SRSに書くのは“どうやって達成するか”です。
- PRD=価値の定義:Aha/TTV(p50/p95)/D1、AC、スコープ票
- SRS=実装の定義:UIフロー、API仕様、データモデル、非機能(性能・可用性・セキュリティ)
- 接続=数で結ぶ:AC→UI要件/API契約/イベント名へ正規に移送
【要点一行】PRDは“なぜ・何を”、SRSは“どう”。接続はACと指標で数値化して行う。
まとめ:役割を分けるほど速くなる。
具体例:PRDのAC「3クリック・3分」をSRSに移すだけで、UI仕様の枝葉議論が消えました。
章立て対応表:PRD→SRSを“機械的に”写す
人の記憶に頼ると漏れます。章立ての対応を表にして、半自動で移送しましょう。こうしておくと、引継ぎや監査でも迷いません。背景説明は短く、数と用語を一致させるのがコツです。
【PRD→SRS 対応表 v1.1】
PRD: 目的(旗) → SRS: 目的・用語集(同一文面を貼付)
PRD: Aha定義 → SRS: 受入条件(AC#A)+UI完了トースト仕様+イベント 'achieve_aha'
PRD: TTV定義 → SRS: 起点= view_entry / 終点= achieve_aha の計測仕様
PRD: AC → SRS: UI要件(クリック数)/フロー図/API前後条件/テストケースID
PRD: スコープ票 → SRS: Must/Should/Won’tの機能一覧(Won’tは非対象章へ)
PRD: 体験フロー → SRS: 画面遷移(最短3ステップ+分岐は別紙)
PRD: 計測設計 → SRS: イベント名・props・スキーマ・送信タイミング
PRD: リスク検証 → SRS: フラグ・ロールアウト・失敗時リカバリ
まとめ:対応表が“唯一の翻訳機”。
具体例:Ahaイベント名を両文書で統一し、ダッシュボードの揺れが止まりました。
移送テンプレ:ACをそのままSRSへ落とす
「ちゃんと動く」は解釈が割れます。代わりに、PRDのACをSRSに条文化します。これは、価値基準を実装基準へ写経する行為です。文章を変えず、番号を振って参照可能にします。
【AC移送テンプレ v2.0(SRS貼付用)】
AC#A(Aha到達):入口→Ahaまで最大3クリック(モバイル=2タップ+スクロール可)
AC#B(時間):TTV p50 ≤ 3分 / p95 ≤ 7分(起点=view_entry, 終点=achieve_aha)
AC#C(観測):完了トースト表示と同時に 'achieve_aha' を一意発火(1操作=1イベント)
AC#D(エラー):同画面で自己解決(戻る遷移なし)
UI要件:
- 完了トースト:文言__/表示時間__/非同期更新はスナック通知で代替不可
- 入力画面:初回は必須2項目まで、詳細は次画面へ段階化
API前後条件:
- POST /teams:201返却時のみトースト表示→イベント発火
- 409/422 時は同画面で解決(AC#D)
テストケース:
- TC-A1:3クリック以内で完了(動画保存)
- TC-A2:achieve_aha 一意発火(DevTool確認)
- TC-A3:TTV p50/p95 の計測ログに記録
まとめ:AC→UI→API→TCを1ブロックにする。
具体例:このテンプレを貼るだけで、QAと計測の会話が同じ用語になりました。
非機能要件を“数で”運ぶ:性能・可用性・セキュリティ
非機能が曖昧だと、最後に事故ります。PRDで“速さ・安定・安全”の期待を示し、SRSでは閾値で締める。これは、価値の体感を守るための最低ラインです。感覚語ではなく、閾値で決めます。
- 性能:初回描画TTI ≤ 2.5s(4G実測)/操作応答P95 ≤ 200ms
- 可用性:99.9%(月間)/RPO 1h/RTO 15m
- セキュリティ:OWASP Top10対策/PIIは静止時暗号化/監査ログ保持180日
【SRS 非機能セクション例】
Performance: /teams POST→成功トースト表示 ≤ 250ms(P95)
Reliability: Status 5xx 連続3回でサーキット開放(30s)
Security: JWT exp 60m/PIIはKMS暗号化
まとめ:非機能は“p95の体験”を守る装置。
具体例:P95の上限を明文化しただけで、バックエンドの優先度が揃いました。
データ契約(API/イベント):破綻を先に塞ぐ
PRDで決めたイベント名やAhaの定義は、SRSの“契約”で守ります。なぜかというと、後からの解釈違いは復旧コストが高いからです。APIスキーマとイベントスキーマをSRSに固定し、破壊的変更はフラグ付きでしか出せない運用にします。
【イベント・スキーマ例(SRS貼付)】
event: achieve_aha
props:
session_length: number (sec)
steps: integer
emit_timing: UI 完了トースト表示時
idempotent_key: aha_id(1操作=1)
まとめ:名寄せと一意性が“数の信用”を作る。
具体例:idempotent_keyを導入し、Aha率の±6%揺れが消えました。
テスト設計:PRDの“価値”をテストケースに直結
テスト観点が仕様の羅列になると、価値の合否がわかりません。AC番号に結んだテストIDで、PRD→SRS→QAを一本化します。理由は、価値の不合格は実装の合格より重いからです。SRSには、ケース表とログ検証手順を記します。
【テストケース表(抜粋)】
TC-A1(AC#A):3クリック以内で完了
TC-B1(AC#B):TTV p95 ≤ 7分(ログ検証)
TC-C1(AC#C):achieve_aha 一意発火(Networkタブ確認)
TC-D1(AC#D):エラーは同画面で解決(戻り遷移なし)
まとめ:“価値が通るか”を主語にする。
具体例:ログ検証をケースに入れてから、ローンチ翌日の混乱が無くなりました。
変更管理:v+0.1で両文書を同期
PRDだけ更新、SRSは旧版——これが最悪の事故を生みます。更新は常にペアで。つまり、PRD v+0.1 → SRS v+0.1 → 通知の順で儀式化します。理由は、唯一の真実を二冊で守るためです。
【更新フロー】
PRD v1.3(AC更新)→ SRS v1.3(UI/API/TC更新)→ Slack通知(短文+リンク)→ ダッシュボード閾値更新
まとめ:片方だけ新しい、を作らない。
具体例:ペア更新に切り替え、仕様解釈の齟齬がゼロに。
具体例を“読ませる”:PRD→SRSの行間までたどる
例1|プロフィール入力の美化で迷子になる
PRDのAhaは「成果カードの初回表示」。しかしSRSのUI章は入力UIの美化に紙幅が割かれていた。移送後、AC#A/B/CをUI要件に結び、入力は“必須2項目”に制限。結果、p95は8.2→5.9分に短縮。
例2|Ahaイベントの二重発火で数値が揺れる
SRSにイベントの一意性が無く、別経路でも同名発火。idempotent_keyと発火タイミング(完了トースト同時)を契約化。以後、Aha率は±1%以内で安定。
例3|SSOを先に入れて道が長くなる
正論だが順番を間違えると遅くなる。SRSのスコープにWon’tを明記し、再審条件を設定。PRDの“3クリック・3分”が守られ、D1が+5〜+8ptで推移。
会議台本:PRD→SRS接続レビュー(20分)
移送が甘いと現場で詰みます。20分で接続だけを見る会議を定例化してください。短時間で済むのは、数字が主語だからです。
- 0–3分:PRDの旗・Aha・ACを音読
- 3–10分:対応表と移送テンプレの突合(欠落を赤入れ)
- 10–16分:非機能・API/イベント契約を確認
- 16–20分:テストケースIDとダッシュボード閾値を承認
【ひと言で締める】
「今日は“価値の条文が地図へ写っているか”だけを見ます。足りない箇所はSRS v+0.1で即修正。」
u-note:意思決定の順路を固定する
Aha→TTV→翌日活性の順で見ると意思決定が速くなります。詳しくはKPI設計と運用ガイドへ。
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FAQ
- Q. PRDとSRSを一つにまとめてはダメ?
- A. 非推奨。旗と地図は役割が違います。PRDは価値を言い切る“短い文”、SRSは実装を詰める“長い文”。接続はACと指標で行ってください。
- Q. OpenAPIや設計図の提示はどの段で?
- A. SRSの契約章に置きます。PRDのAha・ACを先に接続してから、OpenAPI/ERDを貼ると迷いません。
- Q. 変更が多くSRSが古くなりがち。
- A. PRDとSRSをペアでv+0.1。通知は短文+リンクで儀式化すると、同期が崩れません。
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