「仕様書って、どこまで書けばOKですか?」——ジュニアPdMが最初にぶつかる壁です。結論はシンプルで、“意思決定が止まらないだけの必要十分”を書けば勝ち。この記事では、現場でそのまま使えるPRD(Product Requirements Document)テンプレと、受け入れ基準/非機能要件/API最小セットのまとめ方を紹介します(企業名・実数は非公開)。
関連の基礎は次の記事も参考に:PdMのための「要件定義」完全ガイド / KPI設計は成果を出すKPI設計と運用 / 優先順位の考え方は優先順位判断フレームワーク。技術リテラシの足場づくりには非エンジニアPdMのための開発知識入門。
- 1. まず“何を決める文書か”を1行で宣言する
- 2. 現場テンプレ:この順で書けば止まらない
- 3. 物語:会議室で止まらなくなった日
- 4. 成功基準は“先行指標”で書く
- 5. スコープ定義:迷いを消す3行テンプレ
- 6. ユーザーストーリー&受け入れ基準(実例)
- 7. 画面・フロー・権限:図は“分かりやすさ優先”でOK
- 8. データとAPI:最小の“契約”を書き切る
- 9. 非機能要件:SLOから逆算する
- 10. 合意形成の運び方(DACI)
- 11. 失敗あるある&回避策
- 12. そのまま使えるPRD雛形(コピー用)
- 受け入れ基準の書き方(Gherkin雛形10)
- 13. 関連記事(内部リンク)
- 14. 有料note&特典テンプレ
- 15. まとめ:仕様書は“前に進めるための最小単位”
1. まず“何を決める文書か”を1行で宣言する
PRDの冒頭に、Decision Statementを1行で。例:「本PRDは、〇〇機能のスコープ/品質/計測を合意し、2スプリントでリリースするための意思決定材料である」。これだけで、読み手が「今なぜこれを読むか」を迷いません。
2. 現場テンプレ:この順で書けば止まらない
1. 背景と狙い(Why)
2. 成功基準(KGI/KPI・先行指標)
3. スコープ定義(IN/OUT・非目標)
4. ユーザーとシナリオ(As-is/To-be)
5. ユーザーストーリー(エピック→ストーリー)
6. 受け入れ基準(Acceptance Criteria)
7. 画面・フロー(ワイヤ・業務フロー・権限)
8. データとAPI(契約・永続化・バリデーション)
9. 非機能要件(SLO/セキュリティ/監視/運用)
10. 依存関係・リスク・決め待ち
11. 追跡(イベント計測・実験計画)
12. DACI(役割と最終承認)
3. 物語:会議室で止まらなくなった日
私:「今回の成功は“初回価値到達率+10pt”。売上は追いません」
エンジニア:「なら、作る優先はAha到達までのフローですね」
CS:「問い合わせ削減の観点も。文言は私たちで叩きます」
私:「よし、DACIは私がD、最終承認はPdMリード。今からPRD更新します」
決める順番をPRDが導いてくれると、会議は自然と前に進みます。
4. 成功基準は“先行指標”で書く
PRDでは、遅行指標(売上)ではなく先行指標(Aha到達率/TTV/翌日活性)を書くのがコツ。詳しい指標設計はこちらを参照。
5. スコープ定義:迷いを消す3行テンプレ
【IN】初回価値に直結するUI変更、文言、状態保持
【OUT】推薦アルゴリズム刷新、通知の最適化、管理画面の高度化
【非目標】売上の短期増、全機能の説明
この3行があるだけで、仕様相談の無駄な往復が激減します。
6. ユーザーストーリー&受け入れ基準(実例)
■エピック
- E1:ユーザーが“保存”まで迷わず到達できる
■ユーザーストーリー
- S1:ユーザーとして、候補リストから「保存」を1タップで完了したい。
■受け入れ基準(S1)
- AC1:候補カードのどこをタップしても保存が1秒以内に反映される
- AC2:保存後はスナックバーで「保存しました」を2秒表示し、Undoが可能
- AC3:戻る操作をしても直前の選択状態が保持されている
- AC4:イベント「save_click」「save_success」が送信され、ダッシュボードに反映
ポイントは、観測可能な事実で書くこと(「使いやすい」はNG)。
7. 画面・フロー・権限:図は“分かりやすさ優先”でOK
- 画面遷移:Ahaまでの最短3〜5手に限定(その他は付録)。
- 業務フロー:BtoBtoCなら社内Opsやパートナーの動きも1枚に。
- 権限:誰が編集/閲覧できるか、ロールごとに明記。
8. データとAPI:最小の“契約”を書き切る
■データ保存
- Entity:SavedItem { id, userId, itemId, createdAt }
- Uniqueness: (userId, itemId) はユニーク
■API契約(最小)
POST /v1/saved-items
- Request:{ itemId: string }
- Response:201 Created / { id, itemId, createdAt }
- エラー:409(重複保存), 401(認証エラー)
- バリデーション:itemId は必須、存在チェック
細部の設計はエンジニアに委ねつつ、破れない契約(I/O・エラー・バリデーション)だけはPRD側で押さえます。
9. 非機能要件:SLOから逆算する
- 可用性:99.9%(Aha到達パスに限る)
- 性能:保存の平均応答 < 1s/p95 < 2s
- セキュリティ:保存操作は認証必須、権限外は403
- 監視:エラー率>1%でPager通知、save_success 0件/1hで警報
- 運用:ロールバック手順、Feature Flagで段階展開
10. 合意形成の運び方(DACI)
D(Driver):PdM(本ドキュメントのオーナー)
A(Approver):プロダクト責任者
C(Contributor):Eng/Design/CS/法務/分析
I(Informed):営業/経営企画 など
承認までの期限と、議論の落としどころ(譲れない条件/柔軟に動かせる条件)を先に明記します。
11. 失敗あるある&回避策
- 詳細を書き込みすぎ:ドキュメントが古くなる → 契約と意思決定の材料だけ残す。
- 目標が売上一本:議論が発散 → 先行指標はPRDに固定(Aha/TTV/翌日活性)。
- スコープの穴:後追いでINが増える → OUTと非目標を最初に宣言。
- 技術の前提ズレ:工期崩壊 → 非エンジニアPdMは基礎を補強(開発知識入門)。
12. そのまま使えるPRD雛形(コピー用)
# タイトル
## Decision Statement
本PRDは ________ のスコープ/品質/計測を合意し、____ までにリリースするための意思決定材料である。
## 背景と狙い(Why)
課題・ユーザーの行動・事業上の機会を1ページで。
## 成功基準(KGI/KPI)
- KGI:____
- 先行KPI:Aha到達率 ____%、TTV中央値 ____ 分、翌日活性 ____ %
## スコープ(IN/OUT/非目標)
- IN:____
- OUT:____
- 非目標:____
## ユーザーストーリー
E1:____
S1:____
## 受け入れ基準(S1)
- AC1:____
- AC2:____
- AC3:____
## 画面・フロー・権限
ワイヤ・業務・ロール。
## データとAPI(契約)
I/O、エラー、バリデーション。
## 非機能要件(SLO/セキュリティ/監視/運用)
____
## 依存関係・リスク・決め待ち
____
## 追跡(イベント計測・実験計画)
イベント名、ダッシュボード、AB計画。
## DACI
D:____ / A:____ / C:____ / I:____
受け入れ基準の書き方(Gherkin雛形10)
1) Given 新規ユーザー When 住所1文字→候補選択→保存 Then 成功トースト+次導線表示
2) Given 成功直後 When 10秒滞在 Then 非モーダルヒント表示(入力保持)
3) Given 初回画面 When 主ボタン押下 Then 最近の作業3件が最上段
4) Given 成功直後 When 24±6h経過 Then 通知1回(直行リンク・解除導線)
…(以下略、合計10本)
KPIの並べ方はKPI設計と運用ガイドに揃えます。
13. 関連記事(内部リンク)
14. 有料note&特典テンプレ
この記事のPRDテンプレ(Google Docs)、受け入れ基準の言い換え辞書、非機能チェックリストは、有料noteで配布しています。購入者特典:PdMスキルテンプレート集(PDF)/キャリア戦略シート(PDF)。
15. まとめ:仕様書は“前に進めるための最小単位”
PRDは芸術作品ではありません。合意を速める骨だけを書いて、ドキュメントに意思決定を蓄える。今日のアクションは1つ、IN/OUT/非目標の3行を現場の案件に追記すること。そこから、会議は動き出します。



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