「何から着手すればいいのか分からない」──配属初日の帰り道、私は駅のホームでメモ帳を開きました。機能の要望は山ほどあるのに、根っこの“課題”が掴めない。会議では立派な言葉が並ぶけど、翌日のユーザー行動は微動だにしない。
そんな私を救ってくれたのは、先行指標から逆算するという考え方でした。Aha(初回価値)→TTV(到達時間)→翌日活性。この3点が動くかどうかを羅針盤に、課題を見つけ、深掘り、実装につなげる。今日はそのやり方を、現場で使い倒した“型”と一緒に、物語のように歩いていきます。
1. 全体像:先行指標から“逆算”する
背景:課題は「きれいな言い換え」ではなく、先行指標を動かす“摩擦の正体”です。
狙い:Aha→TTV→翌日活性を上げるために、どの接点のどの摩擦を外すかを特定する。
このリストで分かること:現場で迷子にならないための視点の順番。
- Aha(初回価値):ユーザーが「価値を感じた瞬間」を1文で定義
- TTV(Time to Value):Ahaに到達するまでのステップを可視化
- 翌日活性:継続行動の“再起動トリガー”を設計
先行指標の設計にまだ自信がない人は、オンボーディング設計とTTV短縮の実践を先に読んでおくと理解が速いはず。
2. 課題の“見つけ方”:5人×15分×週1の軽量インタビュー
背景:重厚な調査は続かない。PdMが自走するには、軽く回せる仕組み化が必須。
狙い:感想ではなく、行動の理由をとる。
このリストで分かること:今すぐ回せる質問の型と運用の型。
質問の型(コピペOK)
Q1. 直近、◯◯を使ってどんな“具体的な行動”をしましたか?
Q2. その行動の“目的”は?(一行)/ 期待は?(一言)
Q3. 途中で迷った/止まった/モヤモヤした点は?(摩擦)
Q4. 代わりに何を考えました?(代替)
Q5. 「こうなれば続けたい」条件は?(理想・再起動トリガー)
運用テンプレ
- 対象:Aha手前で離脱したユーザー/翌日非活性ユーザー
- 頻度:週1、15分×5名(録音・議事メモは1人が担当)
- 保管:「状況/動機/障壁/トリガー」の4箱にカード化
- 次のアクション:障壁→仮説→介入(文面/導線/機能)→計測
質問例はさらにこちらが充実しています → ユーザーインタビュー完全ガイド(質問例&失敗回避)
3. 課題の“深掘り方”:1枚メモで合意形成→すぐ介入
背景:議論が長いほど手が止まる。
狙い:一枚で“今やる理由”に合意して、すぐ動く。
このリストで分かること:会議を前に進める文脈の作り方。
判断ログ(DECIDE-LOG)の型
WHO:誰の(セグメント/状況)
WHAT:どの行動を、なぜ(Aha/TTV/翌日活性どれに効く?)
BET:どの介入(文面/導線/機能/CS)を、どれくらいのコストで賭ける?
METRIC:成功の定義(先行指標/観測期間/幅)
NOT:やらない案(今は捨てる理由)
NEXT:次の賭けの用意(派生仮説)
PRD断片(課題→要件→受入条件)
課題:Aha前の◯◯入力で離脱(翌日活性に効かず)
仮説:項目の不確実性>入力労力。事前選択の“安心”が欠けている
要件:候補の自動サジェスト + 既存データからの推定
受入条件:◯◯選択までの平均時間が30%短縮 / Aha到達率+10pt
要件定義や非機能要件の書きぶりは、仕様書/要件定義の書き方(現場テンプレ)がそのまま使えます。
4. 介入の“順番”:文面→導線→機能(低コスト→高コスト)
背景:PdMは“速く小さく賭ける”。
狙い:学習速度を落とさず、先行指標に効いた証拠を積む。
このリストで分かること:実装前にできる勝ち筋検証。
- 文面:不安を消す一言・行動を促すナッジ文
- 導線:Aha直行のショートカット(スキップ/自動入力)
- 機能:フロー再設計・自動化・固有価値の強化
Slack文面(CS/インサイドセールス連携)
@cs-team
目的:Aha到達率↑(初回◯◯完了)
対象:直近登録で◯◯未完了のユーザー
文面:30秒で終わります。◯◯を選ぶと、××が自動で埋まります。
計測:クリック率/完了率。2営業日で判断。
チームを動かす会話のコツは、未経験PdMの「コミュニケーション術」|現場で信頼される会話のコツが実践的です。
5. 先行指標の“観測”:ダッシュボードは3枚だけ
背景:指標が多いほど、何も見えなくなる。
狙い:先行指標の変化だけを追うミニマム運用。
このリストで分かること:朝見てすぐ動ける設計。
- オンボード:Aha到達率 / TTV中央値
- 活性:翌日活性 / 再起動トリガーの反応
- 学習:施策→先行指標の変化→学び(1枚サマリ)
6. 物語:若手PdMが“動く課題”にたどり着くまで
ゼロイチ期のあるBtoBtoC案件。会議では「入力項目が多い」が論点でした。でもインタビューで見えたのは、“入力の不安”が摩擦の正体だったこと。正式名称が分からない、間違えたら困る──そこで「候補の自動サジェスト」を文面と導線で仮検証。TTVは短縮し、Aha到達率が上がりました。実装前の学習が、ロードマップの優先度をひっくり返した瞬間です。(実社名・実数は非公開)
7. 今日から使える“コピペ素材”まとめ
背景:読むだけで終わらせない。
狙い:明日から“回せる状態”。
このリストで分かること:テンプレの置き場。
① 質問カード(Notion/スプレッドの列名)
状況|直近行動|目的・期待(一言)|摩擦|代替|再起動トリガー|メモ
② 判断ログ(1枚メモ)
WHO / WHAT / BET / METRIC / NOT / NEXT
③ PRD断片(課題→要件→受入条件)
課題|仮説|要件|受入条件|観測期間|派生仮説
④ Slack用 依頼テンプレ
@◯◯ さん
目的:(Aha/TTV/翌日活性のどれに効かせるか)
お願い:(文面/導線/CS対応など具体)
期間:(◯日で判定)/成功の定義:(◯◯が◯%)
8. “先の一手”に繋げる関連記事
- ユーザーインタビュー完全ガイド(質問例&失敗回避):質問の深さと失敗パターンを回避。
- オンボーディング設計とTTV短縮の実践:Aha定義とTTV設計の手順。
- 仕様書/要件定義の書き方(現場テンプレ):課題→要件→受入条件の具体。
- 合意形成・ステークホルダー対応の基本:決め切るための資料と話法。
- OKR×ロードマップの組み立て方:学習の成果を戦略に接続。
9. まとめ:課題は“言い換え”ではなく“摩擦の正体”
課題はスローガンではなく、Aha→TTV→翌日活性を動かす摩擦の正体です。軽量インタビュー→判断ログ→小さな介入→先行指標の観測。この小さなループを粘り強く回すPdMが、最短で事業に効く。
今日の一歩は、5人×15分の枠をカレンダーに埋めることから。
有料noteのご案内
さらに深く実戦で使えるテンプレをまとめました。購読特典:PdMスキルテンプレート集(PDF)/キャリア戦略シート(PDF)


コメント