結論:ステークホルダー調整は“人を説得する作業”ではなく、PRDで「同じ旗と同じ尺(指標)」を見てもらう設計です。
営業は売上の即効性、CSは運用の安定、開発は品質と速度を守ろうとします。どれも正しい。しかし、主語が別々だと会議は終わりません。そこでPRDに「旗(目的)」「道(入口→Aha)」「数字(Aha/TTV/D1)」を先に置き、スコープや受け入れ基準(AC)を“数で”締める。これで議論は主観から離れ、Must/Should/Won’t の線引きで最短合意に収束します。
なぜ衝突は起きるのか:主語が異なるから(導入)
営業の「顧客の声」、CSの「現場負荷」、開発の「技術的妥当性」は、どれも正しいが互いに無関係に見える時がある。共通の座標が無ければ、各々の正しさは平行線のままです。そこでAha(価値実感)を共通の目的地として固定し、TTV(p50/p95)で“距離”、D1で“続いたか”を測る。こうすると、各主張は“どの数字をどれだけ動かすか”で比較できます。これは、議論の単位を人から数へ移すために有効です。
- 営業の主張=契約率に効くか(Aha到達率)
- CSの主張=運用負荷に効くか(p95短縮/エラー減)
- 開発の主張=速度と品質に効くか(p95改善までのリードタイム)
【コピペ:会議の共通言語】
「この提案はAha到達率/TTV p95/D1のどれを何pt・何分動かしますか?」
まとめ:主語をAha・TTV・D1に統一するだけで衝突は翻訳可能になる。
具体例:「住所自動補完」は“便利”だが、Aha直結度が弱いと判断しShouldへ退避、代わりに「項目削減」でp95を2分短縮。
土台づくり:旗・道・数字を“冒頭で音読”する(導入)
冒頭の3分で「旗・道・数字」を読み上げると、その後の主張が自動的に絞られます。なぜなら、会議の土俵が先に固定されるためです。旗=誰の何のためか、道=入口→Ahaの最短線、数字=Aha/TTV(p50・p95)/D1とゲート条件。この順序が、全員の視線を一直線にします。
- 旗:対象/課題/事業価値を一文で
- 道:3ステップ(view→click→achieve)と摩擦の潰し方
- 数字:Aha定義(完了トースト一意)/TTVの起点・終点/D1
【冒頭台本(30秒)】
「本件は“初回管理者”のAhaを3分で達成します。道は3クリック。
今週は入力の摩擦を削ってp95を2分縮めます。ゲートは『p95≤7分・D1≥40%』です。」
まとめ:冒頭の音読は“論点圧縮装置”。
具体例:音読運用に変えた翌週から、時間外のSlackでの再論が半減。
線引きの道具:Must/Should/Won’t票で“善意の膨張”を止める(導入)
最も多い炎上の原因は、善意の追加です。事後的に評価し始めると、論点は枝葉に広がります。最初にスコープ票をPRDへ貼り、変更は「どの指標にどれだけ効くか」を前提に再審する。これは、時間と集中力をAha直結の施策へ投資するためのガードレールです。
- Must:Aha直結・p95短縮に寄与(例:項目3削減/完了トースト)
- Should:価値はあるが代替あり(例:住所自動補完)
- Won’t:今回はやらない(例:SSO/全面リファクタ)
【スコープ票 v1.1(貼付)】
Must:____
Should:____(代替:__)
Won’t:____(再審日:__)
再審条件:Aha -10pt/p95 +20%/法的要件/主要セグメント変化
まとめ:票があると“善意”は悪者にならない。順番の問題として扱える。
具体例:SSOはWon’t+再審日で合意、代わりに“入口固定+非同期化”でp95の山を先に潰した。
受け入れ基準(AC):主観語を禁止して“数で締める”(導入)
「スムーズ」「迷わない」などの主観語は、現場で別解釈になります。ACは「3クリック・3分・一意発火」を軸に条文化し、QAが“数値の代弁者”になるよう設計します。これにより、ローンチ翌日の議論が短くなります。なぜなら、合否が数字で即決するからです。
- 入口→Aha:最大3クリック(モバイルは2タップ+スクロール可)
- TTV:p50≤3分/p95≤7分(起点=view_entry/終点=achieve_aha)
- 観測:完了トーストで
achieve_aha一意発火
【AC一文】
「3クリック・3分(p95≤7分)でAha到達し、完了トースト時に 'achieve_aha' が一意に発火すること。」
まとめ:ACは“価値の合否”。
具体例:長文ガイドを「目的一文+折りたたみ」に変更後、p95が2.1分短縮。
調整の台本:営業・CS・開発に響く“言い回し”集(導入)
言葉選びは速度です。相手のKPIに翻訳して話すと、同じ結論でも合意の手数が減ります。以下の台本を、そのまま会議で使ってください。効果が高いのは、“p95を何分縮めるか”を主語にするからです。
- 営業に:「この施策はAha到達率を+◯pt見込んでいます。p95を2分短縮するので、説明工数が減り受注率に跳ねます。」
- CSに:「p95短縮=問い合わせの山が下がります。エラー自己解決をACに入れて、対応のピークを潰します。」
- 開発に:「Mustは小粒に。完了トースト+非同期化で、計測の信頼性と速度を先に担保します。」
【共通の締め言葉】
「この提案が“p95を何分”縮めるかで優先度を決めます。」
まとめ:相手のKPIに訳せば合意は早い。
具体例:営業向けに「受注率」換算で示したら、Must優先への反論が消えた。
反論テンプレ:3大パターンを“順番”に戻す(導入)
よくある反論は正論です。争点は正しさではなく順番。Won’t+再審条件に落とすと角が立ちません。これは、期待管理を数で行うために有効です。
- 「競合もやっている」→差分はAha到達の速さ・確度。入口を一つにしてp95を削る。
- 「SSOは必須」→初期コホートではAha到達の速さが価値。SSOはWon’t、再審日は◯/◯週。
- 「説明を増やしたい」→長文はp95を悪化。目的一文+折りたたみで理解の摩擦を抑える。
【ひと言テンプレ】
「正しい。今回は“順番”の問題です。Aha直結・p95短縮を先にやり、再審は◯/◯週に。」
まとめ:正論は否定しない。順番で裁く。
具体例:SSOはWon’t+再審条件の明示で、議論が5分以内に収束。
合意を固める書式:RACI+決裁ログ(導入)
誰が相談先で誰が決めるのかが曖昧だと、合意は蒸発します。RACI(Responsible/Accountable/Consulted/Informed)をPRDの末尾に固定し、決裁ログ(v+0.1運用)を残す。そうすると、反故が起きません。これは、“唯一の真実の文書”を守る儀式だからです。
- R=実装責任(Eng)、A=最終決裁(PdM)、C=営業/CS、I=経営
- 変更時はPRDのバージョンをv+0.1し、更新理由と日付を記録
【RACI雛形】
R:Eng-Lead/A:PdM/C:Sales-Lead, CS-Lead/I:Exec
【決裁ログ】
v1.2(9/21):Mustへ「項目3削減」を追加。理由:p95短縮予測2分。
まとめ:人ではなく文書で記憶する。
具体例:RACI導入後、Slackでの“誰が決める?”が消滅。
“見える化”:毎朝5分のダッシュボードで再燃を防ぐ(導入)
合意は時間とともに緩みます。毎朝のタイル4枚(Aha/TTV p50・p95/離脱トップ3/入口別Aha)で、数字の合意に昇華させるのが早道です。そうすれば、過去の論点が再燃しても数分で鎮火できます。
- Aha到達率(昨日/7日移動)
- TTV p50・p95(アラート:p95>目標+20%)
- 離脱トップ3(input_error/wait_over_n)
- 入口別Aha(招待リンク/アプリ内)
Aha→TTV→翌日活性の順で見ると意思決定が速くなります。詳しくはKPI設計と運用ガイドへ。
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FAQ
- Q. 反論が強く、会議が荒れがちです。
- A. 先に“旗・道・数字”を音読し、Must/Should/Won’t票とACを読み合わせます。正しさの競争を避け、順番の議論に戻します。
- Q. 誰が決めるか曖昧です。
- A. RACIと決裁ログをPRDの末尾に常設し、更新はv+0.1で通知してください。合意の蒸発を防げます。
- Q. 現場の“善意の改善”をどう扱う?
- A. 「p95を何分縮めるか」を主語に評価。効果が薄いものはWon’tへ、再審日と理由をセットで公開します。
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