「正しいことを言っているのに、なぜ決まらないんだろう」──転職直後の私が最初に食らった壁です。会議室の空気は重く、誰も反対はしない。でも、誰も「やろう」と言わない。
突破口は、“1枚サマリ”と“反対意見の先回り”でした。つまり、判断に必要な情報だけを1枚に集約し、想定される反論を先に提示して潰しておく。これで議論が前に進むようになったのです。
この記事では、ジュニアPdMが今日から使えるプレゼンの型を、物語とテンプレでまとめます。合意形成の考え方は以下の関連記事にも整理しています:
・PdMの意思決定力を鍛える実践フレームワーク|5枚メモでチームが動く
・改善案が通らない?「説得の壁」とその突破法
・「ステークホルダー調整」のリアルと対策
1. まず“1枚サマリ”を作る(結論→根拠→賭け)
ねらい:相手が「今、何を決めれば良いか」を一瞬で把握できるようにする。
やり方:結論→根拠→賭け(BET)→計測→やらない案 の順で、A4一枚に収める。
よくある失敗:スライドを積み重ねるほど迷子になる。1枚で完結させること。
テンプレ(コピペOK)
【結論】◯◯を実施。目的は Aha到達率 +5pp / TTV -20% を14日で達成
【背景】Aha手前の◯◯入力で離脱。定性:不安の発話多数/定量:◯◯欄で離脱最多
【賭け(BET)】文面B+導線ショートカット(スキップ&自動入力)
【KPI】Primary:Aha到達率、Secondary:TTV中央値/翌日活性
【測り方】n=◯◯/群、最大14日、A/B、採択条件=Aha +5pp以上かつ副作用なし
【やらない案】機能追加は次期(重い・学習遅延)
【リスクと対策】誤入力→修正容易化/ログ監視
【意思決定】本日17:00までに Approve/Comment(DACI:D=PdM/A=EM/C=Dev,Design,CS)
判断軸を事前に揃える型は、「5枚メモ」と相性が良いです。
2. KPIの置き方:先行指標を”上段”に
ねらい:売上やCVだけだと判断が遅い。
やり方:Aha(初回価値)→TTV(到達時間)→翌日活性をPrimary指標に、CVは副指標に。
よくある失敗:指標が多すぎて結論の時間が消える。→先行指標3本に絞る。
KPI設計の全体像は KPI設計完全ガイド が近道です。ロードマップへの接続は ロードマップ作成ガイド を。
3. “反対意見の先回り”チェックリスト
リストの前に一言:反論は「相手のリスク」から生まれます。先に言語化すれば、相手の不安は半減します。
- コスト:工数は?誰が持つ? → 小さい賭け(文面/導線)から。DoR/DoDで品質担保。
- スケジュール:いつ判定? → 14日の観測窓+サンプル到達で打ち切り。
- 副作用:別指標の悪化は? → 苦情/チケット/再起動率で監視。
- 精度:A/Bの信頼? → 閾値(pp)と保留条件を事前合意。
- 代替案:なぜやらない? →「やらない案」を書く(次期の理由)。
反論→返しの台本(コピペOK)
Q: いまやる優先度は?
A: 先行指標(Aha/TTV)に直結。14日で採択/却下まで決めます。
Q: デザインの影響が大きいのでは?
A: 今回は文面/導線の軽量変更のみ。機能改修は学習後に判断します。
Q: 売上への寄与は?
A: Aha→転換率の相関あり。今回はAha/TTVをPrimary、CVは副指標で監視します。
ステークホルダーの心配事を予測する視点は、「説得の壁」や
「ステークホルダー調整」の記事が参考になります。
4. ストーリーの骨格:Before → After → How(順番が命)
ねらい:「何が変わるか」を先に見せ、Howは短く。
やり方:Before(現状の摩擦)→After(先行指標の改善)→How(施策と測り方)。
スライド構成(1〜5枚まで)
- 結論(何を決めるか/採択条件)
- 現状(Aha/TTV/翌日活性と摩擦の証拠)
- 賭け(文面/導線/機能の順で軽く)
- 測り方(期間・サンプル・保留/却下条件)
- やらない案&リスク対策
5. PRD・Slack・レビューの“セット運用”
プレゼンは単発で終わらせない。PRD→Slack→レビューで意思決定を形にします。
PRD断片(課題→要件→受入条件)
課題:Aha前の◯◯入力で離脱(不安の発話多数/ログ◯◯欄で離脱最多)
要件:候補自動サジェスト+説明文(間違えても直せる)+次の一歩の単一提示
受入条件:Aha +5pp/TTV -20%/翌日活性 +3pp(14日/AB/n=◯◯)
Slackアナウンス(コピペOK)
#announce
件名:意思決定のお願い|◯◯の不安解消(文面B+導線ショート)
結論:Aha +5pp を14日で狙う。採択条件と保留条件は1枚サマリ参照。
期限:本日17:00 Approve/Comment(DACI:D=PdM/A=EM)
ダッシュボード:(Aha/TTV/翌日活性の3枚)
レビュー台本(5分で結論)
結論:採択/保留/却下(根拠は先行指標)
副作用:苦情・チケット・CVの変化
次の賭け:保留の場合はセグメント追加 or 文面修正
6. ケース:会議が“決まる場”に変わった日
以前は、スライドを10枚以上作っても、会議はいつも延長。そこで1枚サマリに切り替え、反論チェックリストを導入しました。まず結論を言い、次に根拠と賭け、最後に“やらない案”を示す。
結果、合意は当日中に。動き出しが早まり、先行指標の学習ループが回るようになりました(具体の社名・数値は非公開)。
7. 失敗あるある → こう直す
- 説明から入る → 結論から。相手の“いまの判断”を明確に。
- KPIが曖昧 → Aha/TTV/翌日活性の定義+閾値+期間を必ず明記。
- 反論待ち → 先回りリストで潰す。コスト/副作用/代替案を先に提示。
- 濃い実装を提案 → 文面/導線の小さい賭けから。学習後に重い実装。
8. チェックリスト(印刷推奨)
□ 結論は一行で先出し
□ KPI(Aha/TTV/翌日活性)と閾値・期間が明記
□ 反対意見の先回り(コスト/副作用/代替案)
□ やらない案(なぜ今は捨てるか)
□ DACI(誰が決めるか)と期限
□ ダッシュボードの場所(3枚)
9. 関連記事(回遊用の内部リンク)
10. FAQ(見える形で設置:FAQスキーマ用の内容と一致)
- Q. 1枚サマリで足りますか?
- A. 「決めるため」なら足ります。詳細は付録に回し、会議では結論→根拠→賭けだけ。
- Q. 反論が止まらないときは?
- A. 反論の“正体”を分類(コスト/リスク/副作用/代替案)。それぞれの返しをテンプレ化。
- Q. 売上への寄与を示せと言われる
- A. 先行指標(Aha/TTV/翌日活性)と転換・解約の相関をセットで提示。短期の学習を優先。
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